今朝のテレビでダイエーの元副社長の平山氏がでていらっしゃいました。なぜ、ダイエーが失敗したのかをご本人の言葉では、「まるく」おっしゃっていましたが、やはり内部にいた方なので、中内批判はありませんでした。
もちろん直接の破綻原因は土地に走ったことです。しかし、本質的には、そのことも含めてワンマン経営に原因があったと思います。平山氏は土地問題はダイエーだけではなく、それよりは「効率化に走り、人を育てるしくみをつくれなかった」、また「中内さんから、小売業は『変化対応業』だと言われ続けたが、変化に対応できなかった。変化に対応するのは結局は現場の人であり、人が育たないために変化にも対応できなくなった」ことに原因があったとおっしゃっていました。それは正しい見方だと思います。しかし、その根本原因は、経営が「効率化」に傾きすぎたことではなく、ワンマン経営の歪みではなかったのかと問いたいのでです。ダイエーを育てたのも中内さん、ダイエーの組織を腐らせ、ダイエーを破綻に導いたのも中内さんです。その責任を免れることはできないと思います。
まだ、ダイエーが飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃にダイエーの仕事をした経験があります。就職した広告代理店がダイエーのメイン代理店でした。当時のダイエーは急成長をしており、慢性の人材不足ということもあり、広告代理店のスタッフは内部に深く入り、広告代理店の枠をこえた仕事をしていました。事業計画を書いたり、海外に出店した店の販売促進の実務をこなす体制づくりまでやっていました。20代の頃に、キャリアからかけ離れた大きな仕事させていただいたことは今でも感謝しています。しかし、仕事を通して、ダイエーは必ず破綻する、中内イズムに納得できない、腐敗した組織との仕事はしたくないと思い、回りの人たちからすれば「おいしい仕事」も「おいしい会社」も辞めました。

ワンマン経営は、イエスマンの集団をつくることはいうまでもありません。それだけではありません。極めて排他的な集団が生まれてきます。つまり中内さんの「村」みたいなものができあがります。それは決して正式な組織でもなんでもないのですが、「村」から外れた人たちは、たたとえ役員といえども誰もついてきません。誰も言うことも聞いてくれません。多くの優秀な人材がはいってきても、やがて辞めざるをえなくなってしまいます。業績をあげたかどうかなんかは関係ないのです。

経営学のケーススタディで、「ダイエー碑文谷店」が取り上げられることがあります。所得水準の高い碑文谷という地域に、ダイエーが進出しました。当時の店長は、これまでのダイエーでは成りたたないと思い、さまざまな障害を乗り越えて、商品の品揃えをはじめ、ひと味違うダイエーを実現されました。その結果、ダイエー碑文谷店は成功しました。
しかし、そのことは中内「村」の人たちからは非難の的になります。「それはチェーンの理念と違う」という批判でした。中内さんに評価されると自分たちの立場が怪しくなります。結局、その店長はお辞めになりました。私の知る限りでも能力の高い人たちがずいぶん辞めて行かれました。むしろ能力のある人ほど辞めて行かれました。
結局、評価は中内さんとどれだけ近いかということでしかありません。表向きの基準と裏の基準のダブルスタンダードが存在するのです。そういう組織にはかならず腐敗が起こってきます。

さらに、チェーンストアの理念、セントラルバイイングと標準化と言う名の下に、中央集権の体制がどんどん肥大化していきました。現場が軽視され、本部がどんどん官僚化していきます。それとともに管理コストがどんどん上がっていって、「市場のお店」より高くしか売れないしくみになってしまいました。中内さんのチェーン主義は、すでに成長過程から破綻していたと思います。
さらに官僚組織は、今の社会保険庁ではないですが、大きな利権が生まれ犯罪や不正が多発します。いくつかは発覚し、表面化しましたが、隅々にたかりの構造ができていたのではないでしょうか。それが当然仕入れコストにも跳ね返ってきます。
しかも、戦前・戦中になんでも「天皇陛下」といえば軍部の無理難題が押し通せたのとおなじように、個人の都合が「中内会長の意向」にすり替えられていきます。そうして「考えること」「自ら判断すること」が否定されていきます。軍国主義日本が暴走していったのと同じです。中内さん本人と、その側近による恐怖政治は、やがてなにも考えない社員、勝手に工夫すると身の危険を感じる社員をどんどん増殖していったのです。
高木社長も、平山元副社長も、そういった社員の意識改革をめざして、現場に入って大変な努力をされました。痛ましい努力でした。しかし長年の蓄積による慢性病はそう簡単には治せなかったということでしょう。
こうやって中内経営は破綻していきます。イエスマンで固められた組織は同じようなことが起こっていると思います。西武鉄道とコクド、讀賣新聞もそうではないでしょうか。ワンマン経営は、経営者本人の意思でないとしても、本人の見えないところで組織の弱体化を生み出していきます。讀賣が、プロ野球問題であのような酷い社説をだし、自らの権威を傷つけたわけですが、まともな体質があったなら、社内で反対意見がでたはずです。おそらくダイエーと同じような恐怖政治があるのだと想像します。

知恵と知恵を出し合い、ぶつかり合い、新しい知恵を生みだす組織づくりに成功したからこそ、強い日本が生まれました。以前ご紹介したように、一橋大学の伊丹教授は、日本は「資本主義」の国というよりは、「人本主義」の国だという視点をずいぶん前から提唱されています。
知恵の時代の主人公は「人」です。「人」を「道具」としか思わなかった中内さんは、きっと、このことに気がつかなかったのでしょう。時代の変化が激しくなるにつれ、「人本主義」という考え方は、今後さらに重要になってくるに違いありません。ダイエーの破綻は、会社は「人」であり、「人」がお客さまと向き合って、生き生きと仕事できなければ、どんなに大きな会社でも破綻するという教訓だと思います。

↓おひとり、おひとつのクリックが元気の素になっています。

 人気blogランキング

ありがとうございます。(^_^.)