マーケティングはラブレター

マーケティングは、ラブレターみたいなものです。お客さまに向けて、お客さまに共感していただける素敵なラブメッセージを送りつづけようとする。それが、現場のもっとも大切なマーケティング・マインドだと思います。
マーケティングとラブレター、あるいはマーケティングと恋愛そのものとは、とてもよく似ています。
いずれも、相手の人の気持ちを考えずに、自分をアピールするだけ、押し付けるだけでは、相手の人に振り向いてもらえません。
マーケティングでは、これがつくれるから、これが売りたいからという供給側の事情だけで売っていくことをプロダクト・アウトといいます。自分が好きだからといって、恋愛を押し付けるプロダクト・アウトな恋愛はおしゃれではありません。

次に、マーケティングでもラブレターでも、メッセージに想いがこめられていないと伝わりません。静かな想い、熱い想い、それはその人の個性です。どのように伝えるかも創意工夫が必要です。しかし、どんなラブレターであれ、どんな商品やサービス、あるいは広告、ＰＯＰであれ、想いのないメッセージに魅力はありません。
想像してみてください。ラブレターを書くときに、「女性」とか「男性」に向けて書きますか？違うはずです。特定の好きな人に向けて書きます。相手はオンリーワンです。その人の姿とか顔とかを思い浮かべながら書くはずです。
マーケティングも同じです。マーケティングの現場で、「生活者」とか「顧客」とかの一般名詞で発想しているようではリアリティがありません。ひとりひとりのお客さまの顔が浮かんでくるぐらいでないと、誰に向けたのマーケティングなのか、誰に向けた提案なのかがぼやけてしまいます。
お客さまは、本当に自分の悩みや気持ち、また自分が望んでいることをよく知っていると感心したり、感動したときに、はじめて買ってくださいます。一般名詞からの発想では、そんな共感はつくり出せません。
最後に、ラブレターは、はらはらドキドキしながら相手の人に届けます。ラブレターという方法でなくとも、なんらかの意思表示がなけれ、恋愛は始まりません。恋愛小説をいくら読んでも、ラブソングをいくらたくさん聴いても、恋愛はスタートしません。マーケティングも同じです。いくらたくさんの書物を読んで知識を学んでも、お客さまに対するなんらかのアクションをしなければ、また現場でチャレンジしなければ、マーケティングは始まりません。マーケティング・マインドやマーケティング・センスも身に付きません。
そういえば、ラブレターを出したからといって、うまくハッピーな結末になるとは限らないこと、チャレンジしてみなければ、結果がわからない世界だというのも同じですね。
マーケティングを学ぶには、もちろん、書籍や雑誌などから、さまざまな知識を得ることも大切だとは思います。しかし、恋愛に限らず、友達や仲間、夫婦、親子、職場、あるいはお客さまとのお付き合いなど、さまざまな日常の人間関係づくりからも学べることが多いと思います。少なくとも、マーケティング・マインドは、知識から得られるものでも、磨けるものでもありません。私はそう思います。

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