「週刊!木村剛」で、「デフレ論者はどこにいった?」という木村さんらしいコラムを見ました。
私自身はマーケティングの分野の人間なので、現場の視点で見ると、まだまだ日本のビジネスは危うさを持っており、楽観視できる状況ではないと思っています。
最終製品を考えた場合、価格を押し下げる圧力は決して弱まってきたわけではありません。今、景気回復のひとつの牽引車であるデジタル家電も、売上高は、市場の成長とともに伸びていっていますが、利益率となるとおぼつかない状態です。
なぜ、価格を押し下げる圧力が働いているかですが、いくつかの原因があります。
まず、メーカー間の厳しい競争があります。デジタル家電などでは、世界規模での競争です。日本のメーカーの一人舞台という感がありますが、世界規模で、日本のメーカーが競争しあっています。まさに骨身を削るような開発競争を行い、結果として製品のライフサイクルはどんどん短くなってきています。まともな価格で売れるのは、よほどのヒット商品でない限り、数ヶ月程度という状態です。
第二に、これは日本独特の問題ですが、流通の再編がドラスティックに起こってきています。零細な専門店がどんどん減少し、量販店のシェアが年々高まってきています。しかも、小売業が所得階層別にセグメントされている海外と違って、これらの量販店が、同じターゲット、同じ地域で激しい競争を行い、結果として価格を押し下げる原因となっています。しかも、かつての価格は、卸や零細な専門店の生存を前提としたものでしたが、いまや、卸も統合がどんどん進み、一括仕入れという流通の合理化が進むと、価格は下がっていきます。
第三に、一部の部品産業を除いて、最終製品でなくとも、需要よりも供給能力が上回っている状況に変わりはありません。だから、量の出る標準品は、やはり厳しい競争にさらされ、価格は押し下げれます。カスタマイズした製品、より高い技術に専門特化した製品開発、またビジネスモデルの変革などが必要なのですが、まだまだチャレンジが始まったばかりです。
最終製品や中間製品がそういった状況の中で、今、素材を中心として値上げが起こっています。今やコストに占める原材料比率は、どんどん落ちていっていますから、それらの値上げが決定的に危機を呼ぶとは思いませんが、手放しで喜べる状態というわけでもありません。
木村さんがご指摘の虎視眈々と値上げを狙っているさまざまな分野は、比較的付加価値の低い産業がほとんどであり、中国・アジアの好景気によるプラスアルファの需要で救われてはいますが、将来に向けた力強い変革が行われた結果とはとても思えません。
これらの問題は、日本の産業が構造転換でききれていないために起こっている問題だと思います。過渡期の苦しみだと思います。しかし、景気浮揚策として、公的資金をばら撒いたり、インフレターゲットの政策を行っても解決するという問題でないことはいうまでもありません。

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