「販売」だけでなく、本当の「営業」活動が求められてきているというお話をしました。そんなことは当たり前じゃないかと感じられるひとも多いようですが、頭のなかではわかっていても、どうやって、営業活動を変革し、組織的に育てていけばいいのかについては、まだまだ模索の段階であると言うのが実態だと思います。
ひとつの切り口に、営業プロセスを重視しようという考え方があります。これは、どのような方法で営業活動をしているかという営業活動の中身を重視するということです。営業活動の中身は、ひとつは、商談の質の問題であり、お客さまに対する営業の進め方、活動のステップの組み立て方の問題です。
これまでは、どちらかというとノルマ管理が主流で、結果を見るというマネジメントでした。今でも、さまざまな評価制度を変更してプロセスを重視に移行しようとしても、実際は結果で評価するという場合がまだまだ多いようです。
こういう説明をすると、いかにもプロセス重視が優れているかのようですが、営業経験の長いベテランほど、釈然としないという方が多いと思います。しかも、世の中の流れである成果主義との関係はどうなるかです。すぱっと割り切れるほど単純な問題ではありません。
たとえ、結果主義であれ、結局は、営業活動の質と量がともなわないと結果が出ません。しかも、数字に対する執着がないと、営業活動の質を磨き、得意先に食らいついていくという粘りもでてこないという経験を多くのベテランの方はお感じです。その通りだと思います。
もう一つの視点があります。営業は個人プレイなのか、組織プレイなのかです。この点をどう見るかで、大きな違いが生まれてきます。営業は理論じゃない、所詮足と身体で覚えるものだという方は、所詮個人技の世界だと思われるでしょう。そういった側面は確かにあります。もっと言えばそのことは、営業という仕事だけの問題ではありません。
問題は、そうやって人を育てるには非常に時間がかかるということです。このスピードの時代に、市場も、お客さまも、長い目で待ってはくれません現場の人たちはつねに競争にさらされています。しかも、課題解決のための提案を組み立てるにしても、かつてとは比べものにならないほど、多くの知識や提案の質が求められてきています。市場やお客さまの求める質に、個人で、ひそかに勉強して応えていけるというほど生やさしくはないのです。どうやって、生きた情報交換をして、さまざまなケースを学び、どのような営業提案をしていけばよいのか、また組み立てをしていけばよいのかを組織的に学ぶ時代になってきた。このことは間違いありません。
営業部門が、プロセスも重視し、また組織的に学びあおうとすると、ツールが必要になってきます。定期的にワークショップを開くのはいいですが、日常のなかで、いちいち会議を開いて、お互いの営業活動を報告しあうというのは非現実的です。なんらかの情報共有するシステムが必要になってきます。こういった背景があって、この主旨に賛同していただいた方々に出資の協力をいただき、私と私の仲間で、営業のための商談情報を共有するシステムを開発しました。そうして株式会社ビジネスラボが誕生したわけです。
いずれ、ナレッジマネジメントのお話をしようと思いますが、やがてそのシステムは、ナレッジマネジメントのツールにも発展していくと思います。知恵の引き出しをつくるということです。ただ、ナレッジマネジメントは、ITの技術だけではできません。もうすこし時間がかかると思います。
私は結果を見るというのはとても大切なことだと思います。しかし結果主義も見直しが必要です。戦略のない結果主義、メリハリのない結果主義は、組織を育てません。選択と集中が必要です。なにを重点化し、なにを伸ばしていくのかという方針がないと、その考え方がよかったのかどうかという検証すらできません。
結果主義か、プロセス重視かは対立するものではなく、営業の「情熱」と「知力」をどう育てていくかという視点が大切だと思います。結果とプロセスをどの程度のウェイトで重視するかは、それこそマネジメントの問題です。