日本は、江戸時代のころから識字率、つまり文字を読める人の割合が8割を超えていたそうです。19世紀の時代では世界に例をみない教育水準の高さですね。鎖国から一挙に近代国家に発展していった背景、さらに敗戦を乗り越え世界第二の経済大国に成長できた背景にも教育水準の高さがあったことはいうまでもないことです。
また、日本の企業経営のなかには、「人こそ資産」という思想が脈々と流れています。人を育てることを重視する経営が、やがて世界市場を席巻する品質や技術を生み出してきました。一橋大学の伊丹教授が、日本は社会主義でもなく、資本主義でもない『人本主義』だと名づけたのも頷けます。
さて、全国知事会の「平成17年度国の施策ならびに予算に関する提案と要望」ですが、「三位一体」の改革どころか、既得権めぐって「三すくみ」、小泉さんは例によって丸投げで膠着していた状況に一石を投じる「提案と要望」であることは評価できます。
しかし、この「提案と要望」で、義務教育費を削減するというのは、数字合わせの安易な発想だと反対意見がでたのは当然でした。今日の『サンデープロジェクト』で、この問題を熱く語っていた長野県の田中知事をはじめ、石原都知事など数人の知事から反対意見がでて、反対意見があったことを付記して提出するということで決着がつきました。さてボールは小泉さんに投げられました。どのように進めるのか、手腕を見たいところです。
この問題について、新聞各社の社説を見ると面白いですね。読売新聞は、18日の「『数合わせ』で教育を論じるな」、20日の「安易な義務教育の補助金削減案」と二回にわたって社説を展開しています。対照的なのは朝日新聞でした。この教育費削減案が数字合わせをした面は否定できないとしながらも「補助金廃止案――丸投げ首相は丸のみを」という主張になっています。
日本が資源のない国であり、高度な「知恵」や「技術」でしか生きていけないことはいうまでもないことです。その基礎となるのが教育です。それが、近頃は教育現場の荒廃や学力の低下という憂うべき事態が生まれてきました。
神戸大学の加護野さんが面白いことを言っていました。人間は、どんなに肉体的な能力があっても3倍の能力を発揮できないというのです。オリンピックで100メートルを9秒台が走れるといっても、健常者なら、その3倍の27秒台以内で十分に走れます。ところが「知恵」や「技術」の世界はちがいます。いくら3倍時間をかけてもいい発明ができるというものではありません。
教育は、日本の生命線だという本質を忘れた改革は、改革でも何でもありません。日本の未来を見誤るなと言いたいですね。

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