会見する表情は目も虚ろで、痛々しい貴乃花親方ですが、心の病に陥ってしまった危うさすら感じさせます。しかも相撲協会からは、貴乃花が引退理由とした圧力、一門からの締め出しを即座に否定され、引退劇が貴乃花の思い込みによる独り相撲の様相すら帯びてきています。それにしても相撲協会も、いくら言い訳をしても、ガバナンス能力不足は否定できません。
貴乃花から感じるのは、相撲の力士として、また相撲の指導者としては優秀としても、社会人としては、あまりにも頑なで、独りよがり。コミュニケーション能力に欠け、結果として他人を動かすことができない人物像です。協会から感じるのは、相撲を解説させればさすがという親方も、マネジメントの視点でいえば及第点をとれる人がいないことです。

結果、貴乃花は、現役時代は、角界の一時代を輝かせ、ひとびとを魅了した大横綱で、引退後も親方としては見事に3名の関取を育てた名伯楽でありながら、あまりにも自らが考えることと周囲のズレが激しく、結局は相撲協会だけでなく、自らが築いた一門からも孤立してしまい、ついに角界を去るところまで追い込まれてしまったということでしょう。ファンのひとたちもたいへん残念なことと思います。

やはり、健全な指導者になっていくためには、さまざまな状況への対応力が問われますが、高校に進学せず、若いうちから相撲漬けになり社会から隔絶してしまい、柔軟性を身につける機会を持てなかったツケが回ってきているのではないでしょうか。

貴乃花は、もう角界に残ることはないでしょうが、どうやって今後の道を切り開いて行くのでしょうか。相撲、しかも狭い土俵の世界ですら孤立してしまった貴乃花が、引退して新しい道を切り開いてやっていけるほど世の中は甘いとは思えず、支援者次第ということになりそうです。

競技を支える組織、指導者を育てることがどの競技であれ重要ですが、相撲については、貴乃花だけでなく、協会そのものが、ドタバタ劇の繰り返しをやっています。協会側も、理事長の八角親方も、広報の芝田山親方にしても、記憶に残る横綱でしたが、協会のマネジメントという点ではどうもスッキリしません。神事だと、部外者に触れさせない領域をつくり、しかも、相撲道一筋で育ってきた親方ばかりでやっている限界でしょうか。

相撲は、運良く、外国人力士が相撲人気を高めてきてくれましたが、今回のドタバタ劇を見る限り、また組織運営の拙さを感じるにつけ、また今後も危機を招く問題を起こす危うさを抱えています。

マネジメントについては外部の人材を得るなどの組織改革が急がれているのではないでしょうか。