EVをビジネスとして成り立たせ、自動運転でも先行し、押しも押されぬ次世代EV時代を切り開くリーダー企業といえば、なんといってもテスラだと思います。そのテスラがなんとサプライヤーに対し、2016年までさかのぼって部品の支払いの一部を返金するよう要請したというニュースが流れていました。いかにも時代の先端を走る企業のイメージとは程遠い、資金繰りに苦しむテスラの姿が浮き彫りになったのです。
なぜテスラが資金繰りに困るようになったのでしょうか。多くの評論家の人が描いたのは
電気自動車は、ガソリン車よりも部品点数が激減し、しかも部品を組み立てればいいだけなので、どんな町工場でも生産ができるようになる。だから大手の自動車メーカーの優位性が揺らぐというストーリーでしたが、それが現実は違ったのです。
ちょうど一年ぐらい前、モデル3が発表され、テスラは話題の渦中にありました。モデル3は、イーロン・マスクCEOが「万人向けのモデル」と宣言したように、これまでの高級車としてのEVではなく、普及価格に抑えられ、本格的なEV普及時代を切り開く期待を一身に背負ったモデルでした。
予約が殺到し、市場の期待も膨らみ、株価もどんどん上がり、昨年末には、時価総額でホンダ、日産、フォードなどを上回り、GMやBMWに迫る勢いでした。
しかし、現実はなんと、量産ラインをつくれなかったのです。目標の生産台数がまったく実現できない状態がつづき、作れないから売れない、売れないから赤字が続き、この時代の寵児の資金も枯渇ししはじめたのです。
つまり、次世代を切り開くはずのモデル3に立ちはだかったのは工場での「ものづくり」でした。EVは生産が容易だという神話が崩れたのです。
イーロン・マスクCEOも現場につめて努力したものの、ようやく1年を経て、生産目標の週5000台にたどり着いたとはいえ、現場は過酷なノルマでブラック化し、しかもコスト高のままだといいます。
EVに関しては、居酒屋談義の乗りで、電気自動車の時代がもうすぐやってくるのだと熱く語る人がいらっしゃいます。そんな話を聞くたびに戸惑いを感じてしまいます。原因はイノベーションの速度感覚です。
どうも、第三次産業革命としての、デジタル革命で体験したイノベーションの速度と同じようにEVも進化するとという錯覚があるように思えてなりません。デジタル革命の進化速度を支えたのは、「半導体の集積率は18か月で2倍になる」というムーアの法則でした。実際、その凄まじい進化速度を私たちは体験してきました。
しかし、EVの場合の技術でボトルネックになっているのは電池です。電池の容量や価格、充電に要する時間などで、まだまだ実用的とはいえないのが現実でしょう。そして性能を飛躍的に向上させる方法がはっきりしている半導体と違って、どうすれば飛躍的に性能をアップできるかは、地道な開発の積み重ねのなかで発見していかなければなりません。
電池で使われる液体を固体にすれば性能が現在よりもアップできるという研究があります。「全固体電池」です。その研究が注目されていて、23社もの民間企業が参加する産官学プロジェクトが発足したようですが、本格的なEV普及の時代の到来は、「全固体電池」が量産化できる日を待つしかないのかもしれません。
日本発の技術であり、また日本が強みを発揮できそうな分野だとは思いますが、電池のイノベーションは国家レベルの競争でもあり、鵜の目鷹の目で技術が狙われることは間違いありません。国をあげて、発明やノウハウをどう守るのかの戦略が必要になってきます。
技術を持った人材の流出が大きなリスクになってきますが、技術者や研究者の待遇が相対的に低い日本はその危険性が極めて高く、そろそろ第四次産業革命時代にむけた「働き方革命」が必要ではないでしょうか。また、創造を支える文化の問題だと思います。
夢を語ることは大切ですが、「夢」を語るだけではなく、身近なところからでも、「創造」をリスペクトし、また「創造」を育てる文化づくりに取り組んでいきたいものです。
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