日大フェニックスの悪質タックル問題に未だどっぷり浸かっているテレビの情報番組ですが、その後の推移を追いかけるものの、なかなか本質に切り込めていないように感じます。なかでも、違和感があるのは内田前監督が、日大を27年ぶりに甲子園ボウルで優勝に導いたアメフトの名将であるかのようにコメントされている事です。そう思い込んでしまうと今回の悪質タックル問題が起こった背景がわからなくなってしまいます。
内田前監督は、選手を虐め強くできると錯覚していたような人ですが、日大が優勝出来たのは内田前監督の選手育成スタイルやゲーム采配の結果とはとうてい思えません。
内田前監督が名将誉れ高い方なら、学生チャンピオンを決める甲子園ボウルにもどんどん出場していたはずです。篠竹監督の引退にともないヘッドコーチから監督に就任したのは2003年、この年は入れ替え戦出場という苦いデビューでした。そして、内田前監督のもとで日大フェニックスが甲子園ボウルに出場したのは5回ですが、法政大学は7回で2回優勝。早稻田大学が3回と関東は甲子園ボウルの席を巡って3校が競いあう状況でした。有能な選手を集めるスポーツ推薦枠などで優位にあったにもかかわらずです。
グラウンドでのコーチや監督としての資質は、並はずれたものがあったと手放しでは言えない内田前監督ですが、しかし、日大運動部の予算を握り、さらに職員の人事に絶大な影響力を駆使して、フェニックス復活に向けた戦力強化を進めてきたのは事実です。そのことによって日大フェニックスが変わったのだと思われます。
その目玉となったのが、関西で関学とトップを競り合う立命館大学出身の有名選手などをコーチとして外部からリクルートしたことです。コーチングのレベルを上げるとともに、その人脈を生かして、それまでは関西で立命へ選手供給していたアメフト強豪高校から選手をスポーツ推薦で大量にとって選手補強も実現しています。当然チーム力がアップします。
今回の事件で、それらの3名のコーチは辞任しましたが、甲子園ボウル優勝もその外部コーチに負うところが大きかったとも言われています。それらのコーチが、果たしてチーム作りや選手育成に合理性を感じさせない「内田流」と指導方針が合っていたかはかなり疑問です。まるでヤクザの手先のような役割を担ってきたのは、親分子分の支配関係が濃い井上前コーチなどの日大出身コーチだったのではないでしょうか。
いずれにしても、外部から人材を導入し、ノウハウやリクルートの人脈を得る事は、チームを強化する最も効果的な方法で、それは内田前監督が、日大の常務理事という立場だからできたことです。そしておそらく、内田前監督が常務理事から理事長に昇格するための実績づくりのためには、日大フェニックスの甲子園ボウル二年連続制覇が大きな鍵を握っていた、だから選手を極限にまで追い込み、渡ってはいけない一線を超えさせてしまったとも考えられます。
他大学を圧倒する予算をつけ、コーチは職員として優遇し、そしてふんだんにスポーツ推薦枠を使うことなど、他の並みの大学ではできるものではありません。日大の経営が相撲の田中理事長、アメフトの内田常務理事のもとに支配されていたから可能だったのでしょう。
予算が少なく、コーチは手弁当とは言わなくとも、ボランティアでやってもらっているに近い大学も少なくない中では、日大が優勝出来ない方が不可解なのです。「内田式」の非科学的な「追い込む、いじめる」指導には限界があったということでしょうが、常務理事の立場を駆使して基盤を強化する事は、「スポーツ日大」を打ち出し、学生確保をねらう日大のブランド戦略に合致していました。
今回の事件で発覚し、問題なのは、その「スポーツ日大」の中身がブラックで、犯罪まがいのハラスメントやマインドコントロールが横行する「反社会的集団」としての体質の疑いを感じさせていることです。そして、なぜ田中理事長や内田常務理事などのひとびとに大学が支配されるようになったのかは、「日大闘争」まで遡る必要がありそうです。20億円もの莫大な使途不明金が明らかになって起こった学園紛争で、学内につくられたバリケード破りを体育会が担ったのです。そのことで、体育会に属する選手を職員として優先的に雇用し、部活動に便宜をはかるという構造ができたのでしょう。
日大紛争 - Wikipedia
予算が少なく、コーチは手弁当とは言わなくとも、ボランティアでやってもらっているに近い大学も少なくない中では、日大が優勝出来ない方が不可解なのです。「内田式」の非科学的な「追い込む、いじめる」指導には限界があったということでしょうが、常務理事の立場を駆使して基盤を強化する事は、「スポーツ日大」を打ち出し、学生確保をねらう日大のブランド戦略に合致していました。
今回の事件で発覚し、問題なのは、その「スポーツ日大」の中身がブラックで、犯罪まがいのハラスメントやマインドコントロールが横行する「反社会的集団」としての体質の疑いを感じさせていることです。そして、なぜ田中理事長や内田常務理事などのひとびとに大学が支配されるようになったのかは、「日大闘争」まで遡る必要がありそうです。20億円もの莫大な使途不明金が明らかになって起こった学園紛争で、学内につくられたバリケード破りを体育会が担ったのです。そのことで、体育会に属する選手を職員として優先的に雇用し、部活動に便宜をはかるという構造ができたのでしょう。
日大紛争 - Wikipedia
それで健全な経営がなされれば問題はないのですが、2012年ごろから、田中英寿理事長と6代目山口組組長とのツーショット写真が流出するなど、反社会集団とのかかわりが疑われているだけでなく、日大のアメフト部でコーチや監督による暴力までも発覚しはじめていることは、日大そのものが反社会的体質に冒されてきていることすら疑わせます。それが今回の悪質タックル問題で再び浮き上がってきた日大問題です。ようやく学内からも内田常務理事と理事長の辞任を求める声があがってきているようですが、さてどう決着するのでしょうか。
血税による助成金で運営されている巨大な日大。その運動部がそんな体質であっていいわけがありません。しかも、日常化していた選手への暴行や虐待、また悪質なタックル問題を機に、警視庁が動けばいいのですが、本当に動くのか、お茶を濁して終わるのかで、日大問題の汚染の広がりや根の深さも推察できます。
マスコミも、そろそろアメフト問題の奥に潜んでいる「日大問題」に切り込まないと、ネットを追うだけの存在から抜け出せません。
そしてもう一つ浮き上がってきた問題は、大学のアメフトを運営する連盟のひ弱さ、学生スポーツ組織のマネジメントの弱さも、そんな日大のブラック化を防げなかった要因の一つだった事です。欧米に比べて日本がいまだにスポーツ後進国にとどまっており、スポーツエリートを育てる仕組みはようやく出来てきていますが、国民の生活や、地域に根差したスポーツ活動では遅れをとっています。
また、個を殺し、暴力や脅迫によって洗脳し、監督の理不尽な命令にも盲目的に従わせるというのは、現代のスポーツの進化に逆行している古いスポーツ観です。人々に深く染みついた古いスポーツ観やこだわり、また貧弱なスポーツ振興政策などにもあるようにも感じます。
また、個を殺し、暴力や脅迫によって洗脳し、監督の理不尽な命令にも盲目的に従わせるというのは、現代のスポーツの進化に逆行している古いスポーツ観です。人々に深く染みついた古いスポーツ観やこだわり、また貧弱なスポーツ振興政策などにもあるようにも感じます。
「スポーツ改革」の問題です。
灼熱の甲子園で、選手に熱中症のリスクを追わせ高校野球をさせている事や、選手が全国の強豪校にリクルートされ、高校野球が変質してきている一方で、アマチュアスポーツとプロスポーツの間の厳格な線引きにはこだわる「不思議」なスポーツ観を見直していくいい機会です。
まずは日大学内の自浄作用やマスコミを先導するネット言論に期待したいところですが、それこそ羽生選手のように次元の高いレベルを追及する楽しみかたから、地域コミュニティの中で誰もが日常的に楽しめることまで、多様な「楽しみ方」が重なりあうスポーツ大国を目指したマインドや政策が生まれてくる議論が広がればと願うばかりです。
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