慰安婦問題になると熱病に取り憑かれたように冷静さを失い、国民が流されてしまうのが韓国です。朝日新聞による捏造記事が火元だったことが発覚してからは、さすがに日本国内では、慰安婦問題を政治利用しようという動きは見られなくなったものの、韓国、また海外での韓国社会が執拗に政治問題化させてきたことを見ると、歴史の捏造が暴走する怖さを感じます。そして世界中に「慰安婦像」が拡散し、その間違った歴史認識が浸透することは国益に反します。
その慰安婦問題で国内の支持を広げたい文在寅政権が、慰安婦問題の日韓合意をめぐる「新方針」を打ち出し、日本国内を戸惑わせています。
しかし、この「新方針」にはいくつもの布石があったように思えます。注目したいのは、昨年の年初に、ソウル東部地裁が、朴裕河世宗大教授の著書『帝国の慰安婦』が元慰安婦への名誉毀損について無罪の判決がでました。韓国もやっと慰安婦の偶像化から抜け出し、冷静な歴史の検証の道がひらけたと思っていたところ、文在寅政権になったとたんに逆転の有罪判決がでたのです。出版差し押さえになったことは、いかに煽られた国民感情によって、また文在寅政権へ忖度して韓国の司法が動くかを見せつけたのです。
『帝国の慰安婦』は、丁寧なヒアリングに基づいており、日本と韓国で歪んだ認識で引き裂かれた慰安婦問題の本質がなにであったかを明らかにしようとした意義のある一冊だと思います。
すくなくとも挺身隊と慰安婦の混同があり、慰安婦は「少女」ではなかったことを主張しています。どちらかというと政治色のあまりない著書ですが、それすら葬りさろうとする異常さが韓国にいれば、わからないのでしよう。
政治的な思惑で歴史を修正しようという試みは長期的に考えれば決していい結果を生みません。この「慰安婦問題」を生み出したのは朝日新聞ですが、一部の歴史修正主義「保守」の慰安婦の存在を完全否定してきたことがさらに火に油を注ぐことにつながってきたのでしょう。
そして慰安婦問題の日韓合意をめぐる「新方針」です。再交渉は求めないとはしつつも、相変わらず、日韓合意では真の解決にならず、再び日本の自主的な謝罪を求める態度を示しています。日本だけが特殊な国家だという印象操作を続けたいのでしょう。
しかし、韓国が熱病に浮かれているとしても、日韓関係は、政治だけがすべてではなく、まして慰安婦問題がすべてではありません。問題は、「帝国の慰安婦」の朴教授がありえないとしている「慰安婦像」が偶像化され、世界に拡散されていく流れが止まらないことへの怖さです。
産経が産経らしい社説のなかで、韓国の信頼が揺らぐだけだとしていますが、あまりに脳天気なガラパゴス保守だという印象を受けます。
菅義偉官房長官が「1ミリたりとも動かさない」と再三、明言するように合意を見直す余地はない。合意は国際公約であり、破れば韓国の信頼は地に落ちる。
もっと本気で国際世論が、「慰安婦像」で歪められないための方策を考えるのが政権の責任です。しかし、今のように謝罪するか、抗議するかだけではとうてい日本の信頼を深めることにはなりません。国際世論ができてしまうと、それから抜け出すことがいかに難しいかは、捕鯨問題で日本は痛いほど経験してきたはずです。
世界に広がっている韓国人社会の影響力は過小評価すべきでなく、女性の人権問題とに紛れ込ませ、「少女像」をも、女性人権問題のアイコンにする動きになってきているという側面が気になります。
もしかして、韓国国内、あるいは韓国人のなかに朴裕河教授のように歴史を正視する流れを育てることはできないのだろうかと感じますが、外部に期待するよりは、日本が女性の人権問題に真剣に取り組んでいる国だという評価を得ることを日本は目指すべきではないかと感じます。
女性人権問題先進国のイメージが定着すれば、慰安婦問題で日本を女性の人権を踏みにじる「特殊な国」のレッテル貼りからも逃れることができるでしょうし、日本の社会がいい意味で成熟していくものと思います。
日本は女性の社会進出や女性の人権に関する民度では、後進国だというのが現実ですが。逆に言えばそれだけ伸びしろがあるということではないでしょうか。
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