昨日のメルマガで触れたことですが、外食産業を米価格の高騰、ビールの値上げ、人手不足と人件費の高騰といった逆風が吹いてきています。人手不足はさておき、米価格の高騰と、ビール値上げについては、政治と霞が関による農業社会主義政策の失敗です。なにがなんでも価格を釣り上げ、それでデフレ脱却を狙う安倍政権の思惑も重なっているのかもしれませんが、来年は外食産業にとっては試練の年になりそうです。
なぜ、米価格が高騰してきているのでしょうか。とくに昨年は米は豊作でした。それにもかかわわらず、価格は上昇したのです。今年も東日本で夏の長雨と日照不足の影響を受けたものの、全国では、平年並みの作況指数でした、しかし、価格上昇は止まりません。

理由は政府がそう誘導しているからです。作りすぎないよう国が調整する「減反政策」が昭和46年から続けられてきましたが、ようやく来年に廃止されます。減反政策は、日本のコメ農業を弱体化させました。コメ農家が補助金で支えられ、農業の産業化を阻んできたのです。さらに、補助金がでるために、生産価格よりも低い価格でコメが流通する異常な構造まで生んできました。

それぞれの農家の判断で生産できるようにするため、来年に「減反政策」は表向きは廃止されます。それで、農業がどう進化していくのかを見守ればいいのですが、作付けを抑えて供給を絞り、価格下落を食い止める社会主義的政策は維持されています。転換したのは、食用米の補助金をなくし、飼料米には補助金を出すようにしたことでしょうか。

それで何が起こるかは陽の目を見るよりもあきらかです。飼料米生産が増え、食用米の供給量が減ったために、食用米の不足が起こってきたのです。それがコメ価格の高騰となってきました。

人手不足や人件費の高騰で経営が苦しくなっている外食産業に、コメの高騰は経営をさらに圧迫します。今年度上半期(4〜9月)における外食企業の倒産件数は昨年の同時期と比較して37.9%も増え、2000年以降で最多件数となりました。

そこにさらにビールの値上げです。こちらも、今年、酒税法を改正し政府は酒の安売り規制を行いました。大手量販やスーパーの安売り競争を押さえ、零細な酒販店を保護するためです。そのために、確かにビール価格はあがったのですが、そのために起こってきたのはビール需要の減少です。

そして来春には、ビール大手は、安売り規制対応に加え、物流費の高騰などもあって業務用を中心に出荷価格を引き上げます。とくに居酒屋ビジネスにはかなり厳しそうです。

消費者に価格上昇が転嫁できれば問題はないのですが、価格を上げれば、客足が遠のきます。ただでさえ財布の紐が固くなった消費者に納得してもらうためには、さらにお値打ち感、満足度をあげていく必要がありますが、消費者の財布を緩めるのはそうそうカンタンではありません。

こういう政策の歪がでてくるたびに感じるのは、弱者保護の名のもとに残り続ける日本型社会主義の弊害から、いつになったら抜け出せるのだろうかということです。