今回の選挙当初は自民党や安倍総理のコアな支持者の人たちが危機感をいだいていたからか、怪しげな情報がネットをかけまわっていたように感じていました。自民党圧勝の見通しが報道されるようになって、それも落ち着いてきたので流れがわかりやすいですね。自民党のネット活用では、2005年に自民党応援隊として「チーム世耕」が結成され、それが「自民党ネットサポーターズクラブ」と発展していくのですが、小池都知事が自民党を去るまでは相談役を務めていたことは皮肉な話です。いずれにしても、ネット対策では自民党がかなり先行しているようです。

ネットでは民進党バッシングが広がり、またそれをビジネスにしているようなサイトもありますが、当然ながら、フェイクニュースもでてきます。そんな日本国内のフェイクニュースを調査しようと立ち上がったプロジェクトが、日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の「フェイクニュース研究会」です。藤代さん、相変わらず精力的に頑張っておられます。

今回の選挙を巡ってのフェイクニュースで、面白い事案がありました。立憲民主党の辻元清美さんに対し、「辻元清美、希望公認申請していた」とする記事が9月30日、ネットサイト「もえるあじあ」に掲載されたのですが、その記事がフェイクニュースだったことがこのプロジェクトの調査でわかったのです。10月10日現在で、この記事のツイッター投稿が230回以上リツイートされたとか。230回以上のリツイートでは、ボヤ騒ぎ程度で、このサイトも面目丸つぶれでしょうが、はたまた辻元さんへの注目度が低かったということでしょうか。

辻元さんが、標的になりやすいキャラクターだとしても、フェイクニュースじゃないかと疑うこともなく、脊椎反射する人たちがいるのですね。おまけですが、この話は、TBSが10月11日放送の「ニュース23」で、「230回」を「220万回」リツイートされたと間違って報道したことを報道内容の検証サイト「GOHOO」が取り上げていました。数字がここまで違うと、フェイクニュースになってきます。

ネットは「いじめ」を促す心理が働きやすく、民進党がその対象になっていますが、ネットサイト「アノニマスポスト(anonymous post)」に、安住議員がいかにも希望の党に入りたいがために「憲法改正に前から賛成だ」と変節したというデマも流れていたようです。この記事のツイッタ―投稿は2,600回以上リツイートされ、フェイスブックなども含むソーシャルメディア上で計約6,400人にリーチしたとうのですから、いやはや困ったものです。

権力側に立って、野党を攻撃し、それでアクセスを稼いでビジネスにしているサイトがありますが、いかにも裏情報めいたニュースを売りにしているサイトの情報はまずは疑ってみたほうがよさそうです。

意図的に間違った情報発信が行なわれるのはネットに限りません。フェイクニュースでメディア批判するトランプさんも間違った情報をツイッターに流す常習犯です。今回の選挙のとくに序盤での安倍さんの演説もかなりグレーです。米国ではニューヨーク・タイムズの複数の記者が大統領の演説内容やツイッターでの投稿を分析し、検証して間違いを指摘していますが、日本のメディアでそんな活動が登場してくるのはいつの日になるのでしょうか。