昨年、秋田県で山中でクマにかじられたり引っかかれたりしたような傷痕のある男女4人の遺体が5月下旬から相次ぎ見つかり、さらに駆除したツキノワグマ1頭の胃を調べたところ、中から人体の一部が見つかったというショッキングな事件がありました。

そして、今年も秋田県鹿角市で、タケノコ採りの男女が次々にツキノワグマに襲われて4人が死亡。猟友会が射殺した熊の胃の中から遺体の一部が見つかったようです。
また、さらに同じ秋田県で熊に襲われたと思われる61歳の女性の遺体が発見されたり、タケノコ採りに山に入った68歳の男性の行方が分からなくなっています。

クマによる被害が増えてきています。理由は、いろいろあるようですが、
・クマが増えたこと
・過疎化で里に高齢者しかいなくなったこと
・猟師が高齢化し、人数が減り、駆除数が減ったこと
ではないでしょうか。

ドングリが不作だとクマが餌を求めて人のいるところに来るということをおっしゃっている方もいらっしゃいますが、それはあくまで原因のなかのひとつにすぎないというか、それなら過去から長期的に被害が増えてきていることの説明にはなりません。

クマ
環境省の『クマ類による人身被害について [速報値データ]』をもとに作成

クマは急増していて、宮城県の調査では、2008年度は401〜896頭だったのが、2014年度には1199〜2147頭と倍増しているといいます。それはグラフの人身被害の急増からも推しはかれます。

クマに関しては、迷信がいろいろあります。鈴を鳴らし、ラジオをつけておくとクマが警戒して近寄らないとか、クマの餌はドングリだということですが、いずれもそうとは限らないのです。

クマは雑食動物で、ハイエナのように死んだ動物も食べます。クマの異常繁殖も、鹿が増え、餌となる鹿の死体が増えたことも関係しているのでしょう。かつては日本は土葬でしたが、クマが遺体を求めて墓を荒らすために火葬に変わった一因にもなったようです。またクマは嗅覚が鋭く、加齢臭を感じるとそこに餌があると思って近づいてくるとか。
そうだとすると、高齢者の方が、鈴を鳴らし、ラジオをつけるとそこに餌があるというシグナルになりかねないかもしれないのです。クマの子供が独り立ちを始める今時が危ないので、山に入られる方はくれぐれもご注意ください。かねてからクマの異常繁殖に警告を発してこられた写真家宮崎学氏のブログをぜひ御覧いただければと思います。

いずれにしても過疎化によって限界集落が増えたことで、山の手入れができなくなり。生態系にも変化が生じてきたのです。春の里山では、野生の藤が増えてきていますが、それだけ山の手入れもなされなくなったということです。
生態系が変化してきており、それだけ人と野生動物の共生が難しくなってきているのでしょう。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : ご用心!野生動物が森を占拠し、里と人を襲う時代に: