事業が一発芸の開発に賭けるようになると、それは、もうその事業の末期症状かもしれません。オリンパスにそれを感じます。カメラ事業は営業赤字体質から抜け出すどころか、直近の2016年7−9月期には売上高が前期比31%減となってしまっています。キワモノのアイデアも売れれば結果良しでしょうが、たいていは話題にはなるもののそれ以上にはなりません。オリンパスがMITと組んで開発したオリンパスエアーというカメラにその兆候を感じます。
アプリを使って撮影する狙いは面白いのですが、一体誰が買うのか想像できないのです。尖ったアイデアを求めてブロガーを活用するというのも同じ発想でしょう。必要なのはまずは戦略と事業をマネージできる人材のほうではないかと感じてしまいます。
 オリンパス、“とがった”アイデア求めブロガー活用:ITpro : 

オリンパスの屋台骨を揺るがす危機

いやカメラ事業の存続が問われていても、オリンパスそのものは内視鏡という稼ぎ頭を持っています。内視鏡では世界シェアの75%を抑え、オリンパスの屋台骨を支えています。その内視鏡事業を揺るがす危機がこようとしています。

しかもオリンパスの損失隠し問題の処理は、なんとなく釈然としないものでしたが、やはり隠蔽体質は変わっていなかったようなのです。オリンパスの悪質な損失隠しでオリンパスを追い詰めた雑誌FACTAが、再びオリンパスに迫ってきています。

問題は、米国でオリンパスの内視鏡によって、スーパー耐性菌の感染が広がり、死者まででたことです。これまでも少ないとは言え、断片的に報道されてきました。

スーパー耐性菌についてはまだ広く認知されているとはいえませんが、抗生物質を使っているうちに生み出されてくる抗生物質に耐性をもつ菌のことです。その菌に感染すると効く薬がありません。治療で抗生物質をつかうのは仕方ないとしても、問題は畜産で大量の抗生物質が使われていることです。抗生物質を使うと、少ない飼料で肥育できるので、サプリメントとして使われているのです。それがスーパー耐性菌を生み出します。

内視鏡からスーパー耐性菌の感染が広がっただけでは、かならずしもオリンパスだけの問題ではないのかもしれません。しかしオリンパスは致命的なミスを犯したのです。

この内視鏡によって感染が起こった原因は、内視鏡の先端キャップが外れない一体型にしたことによって充分な洗浄ができなくなったことだといわれています。その仕様変更はそれは本来、日本の厚生労働省にあたるFDAに申請し、許可をえないといけない変更だったにもかかわらず、申請していなかったのです。そして形状の変更に気づいたFDAがオリンパスに申請するように求めたのですが、オリンパスはそのまま販売を続けてしまいました。

さらに、オリンパスは内視鏡による患者の感染を2012年5月に把握しながら、義務付けられている30日以内の報告を怠り、報告したのは2015年にはいってからだというのですから、まさに隠蔽体質がまだ根深く残っていたことになります。

FDAは今年の3〜4月にかけてオリンパスの米国法人や東京都八王子市の拠点、子会社の会津オリンパスに調査にはいっていますが、このスーパー耐性菌感染問題のツケが回ってくるのはこれからです。

FACTAによると、米国側からオリンパスに向けては3つのペナルティが課せられそうです。第一は連結純利益の数年分に及ぶ額の損害賠償。第二は、更に致命的な制裁で、オリンパスの医療機器についての薬事審査は受け付けないというものです。第三は、オリンパス幹部の逮捕です。
まさに、スーパー耐性菌は「患者だけでなく、オリンパスをも滅ぼそうとしている」(FACTA)という様相になってきそうです。

FACTAは有料なのですが一応記事リンクを貼っておきます。

カメラ事業はすでに負け犬の事業となってしまいましたが、この流れでは、屋台骨の内視鏡事業の3分の1を占める北米市場を、富士フイルムとペンタックスに譲らざるをえません。
しかもFACTAによれば、第4のペナルティも課せられる可能性もあるといいます。結果論ですが、損失隠しで揺れたあのときにもっとまともな再建策を講じていれば体質改善もできたのではないかと思いますが、後悔先に立たずなのかもしれません。

それにしてもシャープ、東芝、オリンパス、タカタ、三菱自動車など日本型経営の悪さがでてしまった問題が目立つ昨今ですが、強い体質づくりを怠るとこの時代の激しくまた複雑な変化に適応できず、淘汰されていく時代だということでしょうか。


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