シャープが再び最終赤字300億円に転落する見通しだそうです。業績が回復してきたパナソニックとは対照的です。シャープが発表した2014年第3四半期決算プレゼンテーション資料を見ると、展開している事業のあちらも、こちらも火の手があがってしまっている状態です。
マイケル・ポーターがいう、事業の利益を奪う5つの脅威でいえば、柱のテレビは、中国からの新規参入があって、さらなる値崩れが予想され、同業者間の競争でも、相手が多すぎるだけでなく、韓国のサムスンやLG電子といった強いライバルが存在する壁は高く、さらに販売店の主導権が強いために、売り手との交渉力でも黄色信号が点滅しています。5つの脅威のうち、新規参入、既存競合者同士の敵対関係、買い手の交渉力の3つもの脅威に晒されているとなると、市場の足元が悪すぎます。

4Kでなんとか活路をなんて考えていたら、それはありえません。ライバルがみんな狙っているので、普及が進めば、また際限なく価格競争が進んでいきます。ソニーなら放送機器のほうで稼げそうですが、シャープには稼げる仕組みがありません。もし利益が出る可能性が残されているとすれば、脱家電の新分野のような気がします。

部品としての液晶パネル事業は、高細密な分野では、ライバルは限られており、なんとかうまくやれば、利益を稼げそうですが、しかしこちらにはサムスン、LG電子といった強いライバルだけでなく、国の政策で生きながらえているゾンビ企業がいます。日の丸資本の「ジャパンディスプレイ」です。官民ファンドの産業革新機構が主導し、ソニー、東芝、日立製作所の中小型ディスプレー事業を統合して発足した会社です。

似たもの同士ほど、競争が熾烈になっていくというのは世の習いですが、スマホやタブレット向けの液晶パネル事業の採算が悪化したのは、その「ジャパンディスプレイ」との顧客争奪戦が激しく、急成長してきている中国の小米(シャオミ)を「ジャパンディスプレイ」に奪われたからとか。戦略をもたず、ガチンコ勝負大好きなライバルどうしで、どこまでも消耗戦がつづきそうです。
シャープ赤字、液晶なぜ消耗戦:日経ビジネスオンライン

こちらも、圧倒的に市場シェアを抑えているところがないので、買い手の方の交渉力のほうが強いことはいうまでもありません。

また日経によると、「昨年以降、四角形ではなく自由な形にできる液晶パネル、米クアルコムと共同開発する低消費電力のパネルなどを次々と発表。自動車や産業機器など新分野の開拓にも手をつけた」のですが、これらが収益事業に育つのは早くて3年後になるそうで、それまでの間をどうつないでいくのかが焦点になってくるのでしょう。
土俵際再び シャープ追いつめた「日の丸液晶連合」  :日本経済新聞

部品産業で高収益をあげるためには、圧倒的なシェアで市場を抑え、買い手との交渉力で優位に立つことが必須条件になってきます。今の日本の強い部品メーカのほとんどは、世界トップの位置を保ち、買収も含めて、独占的な立場を維持、強化しつづけています。

液晶事業を柱としたいのなら、そんなポジションを得るためには、なにをすればいいのか、どんなストーリーで手を打っていけばいいのかが「戦略」です。

シャープに欠けているものがあるとすれば、その「戦略」です。なにを武器にして、居並ぶライバル企業と、どんな違いをつくりだしていこうとしているのかがシャープからは見えてこないし、感じることもできないのです。また、小粒な事業や製品が分散しすぎていて、どこが強みなのか、なにを武器にするのかも微妙なところです。今のままではなにを目指している会社なのかもよくわからなくなってしまいそうです。

戦略が見えず、結局は既存事業の改善だけで走ってきた原因はどうも高橋社長が2013年に就任される際に立てられた中期計画にありそうです。計画はあっても、
戦略が示されていないのです。振り返って見てみても、なにかすっと心に染み込むものがない、あっ、シャープは復活しそうだという息吹も感じない、感動もないものでした。
中期経営計画プレゼンテーション資料(PDF:1.6MB)



ちょうどいい機会なので、その中期計画には「戦略」といえるものがあったのかどうかについて考察し、BLOGOSメルマガに書いてみました。ご関心のある方は、そちらで続きをご覧ください。


SFAによる顧客管理ならアクションコックピット

モバイルの活用を広げる営業支援システム アクションコックピット