気持ちを明るくしてくれる、いい話題が目に止まりました。ひとつは、経営不振に陥っていた米国大手家電チェーン「ベスト・バイ」の再建にむけた改革の成果がではじめてきていることです。
米ベスト・バイの8─10月利益は予想超え、売上高8四半期ぶりに増加 | Reuters
もうひとつは、ソニーが欧州で、「現場」と「データ」重視による販売活動の改革で、敗北し続けてきたサムスンへの巻き返しに成功してきていることを取り上げた日経の特集記事です。
ソニー、「サムスンに勝った男」が広げる販売改革 (有料記事):日本経済新聞
いずれのケースも、なにも魔法のような突拍子なアイデアで成果があがったわけではなく、やめるべきはやめ、やるべきことに集中し、しかもそれを継続すれば、結果がついてくるというお話です。

ベスト・バイですが、ネット通販企業の台頭によって、苦境に追い込まれてきました。ただでさえ、ネット企業との激しい競争に巻き込まれたうえに、売り場で商品を確かめ、実際に購入するのは価格の安いネット通販、いわゆる「ショールーミング」の購買行動が広がってきたことで、痛手を被ってききました。危機にかられ、再建にむけた改革「リニューブルー(Renew Blue)」を掲げ、反撃を宣言したのが2012年です。

「リニューブルー」の中味は、流通コンサルタント後藤文俊さんのブログで取り上げられていますが、オンラインにはオンラインで対抗するだけでなく、商品と売り場(スペース)の改善による坪当たりの売上と粗利の向上や、店舗立地の見直しや経費削減などを推し進め、逆に最優先ではないものは、どんどん切り捨てていくというものです。
【ベストバイ】、ツェルプフォース中止!オンラインのサービスよりリアルサービス強化?:激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

そういった改革の結果、売り場がつねに鮮度が高く保たれるようになり、ライバルと差をつけ、顧客を引きつけ、業績にも反映してはじめているようです。詳しくは、後藤さんのブログを御覧ください。
【ベストバイ】、8四半期ぶり増収に大幅増益なQ3!競合の凋落にリニューブルー要因?:激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

顧客との接点としての売り場の商材やコーナづくりなどによる「鮮度」が、小売業にとっていかに大切かを改めて感じさせられます。

もうひとつのソニーも反撃も、やはり売り場に注目した改革です。日経の記事は、ソニー・ヨーロッパの玉川社長への密着取材したものですが、玉川社長は「インド法人社長を務めた2007〜12年の間に、劣勢だった薄型テレビ市場でサムスンから首位の座を奪った」方だそうです。

データを蓄積して分析し、さらに自ら「現場」に足を運び、改善点を探し、効率を考えた販売店の選択と、効果的に消費者にソニーを選んでもらう「顧客との接点」の質を高めていく手法は、こちらも基本がしっかり押さえられていると感じます。
「販売店に売る」「店頭に商品を並べる」「消費者に売る」という商品の3つの流れをしっかりと追跡し、データとして蓄積していく。商品を量販店に売るまでにとどまらず、量販店が店頭に商品をちゃんと展示し、消費者の手に届いているか。ここまでのプロセスを丁寧に追う。
240店を抱える大手家電量販店が、ソニーの液晶テレビを220店で扱ってくれることになった。ところが、実際に商品が並んだ店の数は200を切っていた。「量販店に納入して終わり」では、思うように消費者まで商品が届かないのだ。「基本動作」の徹底で、商流を欧州域内で改善していった。「今では注文された商品が、店頭に何台展示され、何台が消費者へ実売されたか、そして在庫はどれくらい残っているか。これらを週次でフォローしている」(玉川)
ソニー、「サムスンに勝った男」が広げる販売改革  :日本経済新聞

このふたつの記事を読んでいて、どの業種の企業にも、もしかすると政治にもつながる話ではないかと感じます。日本が経済の成長力を再び取り戻すために、国がやるべきこと、企業がやるべきこと、個人がやるべきことはまだまだ多く残っているはずです。

とくに、重要なのは、日本の労働生産性を見ると、先進国のなかでは極めて低く、まだまだ改善、改革の余地が残っています。より生産性を高めること、つまり国民のひとりひとりが効率よく稼ぎを増やすためになにをすべきか、そんな課題に向き合い、「やるべきことをやる」ことへの覚悟と気運が高まってくることに期待したいところです。

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