霧、靄、雨の後に木々の枝で光る滴、濡れた樹木、水たまりの道。しっとりと濡れ、まるで時空を超え、古代の大和を感じさせる写真を撮り続けた入江泰吉を、友人の画家、杉本健吉は「ミスター・ウェット」と呼んだそうです。
入江泰吉は古都奈良を撮り続けた写真家です。晩年の風景写真を集めた「ミスター・ウエット・イリエ」展が入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催されています。
入江泰吉記念奈良市写真美術館 :
入江泰吉記念奈良市写真美術館 :
会場に足を踏み入れると、思わず息を飲み込むような美しい風景に魅せられます。感嘆の声をあげる人もいらっしゃるほどです。
心に描いた風景がしっとり広がる瞬間をカメラを構え何日も待ち続けるというのも入江泰吉のスタイルです。
非破壊検査の企業CM「すずめのかあさん」を覚えている方も多いとは思いますが、そのなかの背景として使われている写真も展示されていました。
子どもが
子すずめ
つかまえた。
その子の
かあさん
わらってた。
すずめの
かあさん
それみてた。
お屋根で
鳴かずに
それ見てた。
入江泰吉が戦前に撮リ続けていた文楽の写真展も同時に開催されていました。大阪の空襲で作品のすべてを失ったそうですが、入江泰吉の奥さんが防空壕に向かうときに躓いた箱を持ってでたところ、それが文楽を撮ったネガを収蔵されていた箱だったそうです。
「ミスター・ウエット・イリエ」展・「入江泰吉の文楽」展は9月29日まで開催されています。近くには新薬師寺や庭から奈良を一望できる白毫寺、また志賀直哉旧居もあっていい散策コースなのでオススメのスポットだと思います。
高畑界隈散策地図:
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