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危機意識を持つことはいいことです。危機に敏感であるからこそ、変化を先取りしてそれに備えようという努力も生まれてきます。しかし、危機をいたずらに煽ることは結果として間違った行動につながってしまうことがあります。その典型が、食料自給率キャンペーンです。いくらカロリーベースの食料自給率をあげようと言っても、自給率を下げている最大の原因である穀物がグローバルな市場経済に組み込まれている限り、貿易に高いハードルをつくって、海外から来る穀物を止めない限り、自給率は上がりません。

食料安全指標だから自民党政権時代でも、民主党政権になっても、自給率を上げる目標を掲げるのですが、それが達成されることはなかったのです。しかも、それに対して、なぜ自給率を上げることができなかったのかもまったく説明されたこともありません。説明できないのです。

実現しようもないお題目を掲げ、予算を使い、小学生にまで自給率の危機を浸透させることに気持ち悪さを感じませんか。

カロリーベースの自給率という発明は、政府、また農村に票田を置く政治家の後押しで大ヒットしたわけですが、昨今は目標割れがつづいて、ニッチもサッチもいかない状態で迷走してきています。それに暇なことに「クッキング自給率」というソフトまでつくっているのです。もう予算を取り上げるべきでしょう。

できないことを目標にするのは最悪です。そしてそこに予算を投入するのはさらに最悪です。

食料の安全保障力について、なにかいい指標で各国を比較できるものがないかと感じていたのですが、出てきました。新しい食料の安全保障に関する指標、Global Food Security Indexがデュポン社の資金援助を受けた英国のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)で開発され公表されています。ちなみにデュポンは農業製品部門が絶好調で2011年通期で、新興市場で前期比27%増と急伸し、全体では同20%増の2兆8880億円の売上となっています。その勢いに乗って、農業分野に力を入れてきているのでしょう。

それによると、世界105カ国について公表されている食料安全保障にかかわるさまざまな要素のデータから、「購買力(Affordability)」、「供給力(Availability)」「品質と安全性(Quality and safety)」の3つの指標で分析を行い、また総合指数化したものです。翻訳には自信がないので、まあ3つの視点を置いているととらえてください。
「購買力(Affordability)」は、家計支出に占める食料費の割合とか、貧困層の割合、一人あたりGDP、農産物輸入関税、農家の資金入手のしやすさ、食料安全保障対策の有無などです。
「供給力(Availability)」は、一日カロリー換算での供給力、農業への研究開発費、保管や交通のインフラ、ここ10年の生産効率の上昇率などです
「品質と安全性(Quality and safety)」は、食料の多様性、栄養管理、食品の安全監視体制、タンパク源の品質、ビタミンAや鉄分などの含有状態などです。

つまり、食料購入について家計にゆとりがあり、農業の生産力が高く、安全性や食料の質に注意を払っている国は安全度が高いということになります。単純なカロリーベースの食料自給率よりは説得力がありそうです。

それによると日本は、「購買力(Affordability)」は世界で15位、「供給力(Availability)」で14位、「品質と安全性(Quality and safety)」で20位で、総合点が80.7。世界16位の実力だということになります。ちなみに1位の米国は総合点が89.5、2位のデンマークは88.1です。結構日本は米国やヨーロッパの各国よりはやや劣るとしても、世界では食料安全保障力の高いほうにはいっている国だと評価されています。

ちなみに韓国は77.8で21位、中国は62.5で38位、インドが45.0で66位、最下位となったコンゴは18.4です。

もしこちらの指標のほうが実態に近いと感じるのなら、農業は食料自給率ではなく、一昨日に書いたように、これからの農業の担い手をどう確保し、育てていくか、そのためには農業流通経路の短縮化や、ブランド化、また輸出へのチャレンジによって、農業をよりビジネスとしても魅力ある産業にしていくことのほうがはるかに重要なテーマだということになります。

どちらの指標を信じるかは自由ですが、もし食料自給率を口にする政治家がいたとしたら、ぜひ選挙区、支持している団体などをチェックしてみてください。それでもカロリーベースの食料自給率を信じますか。

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