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中国高速鉄道事故は、1964年の東海道新幹線開通以来、甚大な事故を起こしていない日本の新幹線と比較すると、なんと安全に対する配慮に欠けているのか、いくら先進技術と大見えきっても、総合的な運用技術ではレベルが低いまま見切り発車してしまったことを感じさせます。

しかし、日本の新幹線との比較ではなく、目を転じて福島第一原発事故と比較すると、いくつかの共通点が見えてきます。

第一は、安全性よりも、中国の場合は高速鉄道の拡張の速度やコストを優先し、日本の場合は原発建設とそのコストを優先したことです。
福島第一原発に関しても、過去に大津波があった歴史を過小評価し、もともとは今回の津波でも浸水しない高さ約35メートルの平たんな台地を、原子炉建屋の基礎工事費や敷地の造成費、また原子炉冷却用海水のくみ上げに必要な動力費などの経費を節約しようと25メートル削ってつくったものでした。もし削っていなかったら福島第一原発事故はなかったかもしれません。また建設を優先するあまりに、津波の危険や断層などを過小評価したことも似ています。
東日本大震災(福島原発) - 一般社団法人 共同通信社 ニュース特集 :


第二は、中国の高速鉄道は落雷、福島第一原発は想定外の津波によって起こったとし、どちらも天災だとしたのですが、いずれも人災ではなかったかという疑念が拭えません。

中国の列車が中国が言うように先進的であっても、問題が発生した時に安全性を優先した対処をすることができず、衝突という信じられない事故になってしまいました。
日本の原発が幾重にも高い技術で安全設計されたものであったとしても、当初の設計や運用に問題があったために電源喪失という最悪の事態が発生し、メルトダウンにいたってしまいました。

第三は、中国は事故原因を調査することなく営業を再開しました。あまりに急ぐ中国政府に批判が集まっています。福島第一原発の事故原因を検証することなく、政府は原発の早期再開を急ごうとしました。また経済界もそれを求めました。

中国の高速鉄道はトラブルが多いと報道されていますが、もし第二の甚大事故が起こったときにどうするのでしょう。もう威信が失われるどころの騒ぎでなくなってしまうでしょう。日本でも同じです。もし原発で第二の甚大な事故が起こったらどうでしょう。おそらく日本の信頼も、経済も、社会にも壊滅的な打撃となります。

第四は、情報が不透明という点です。中国政府は記者会見で、中国の高速鉄道はそれでも最先端だと主張し、事故調査も行わずに事故を起こした車両を埋めてしまいました。
程度の違いこそあっても、東電や政府の記者会見で情報開示に遅れや不透明性に不信感をもった人が多いはずです。最初からわかっていたメルトダウンも公表しませんでした。それにそもそも原発の発電コストは安いといいながら、実際にどうかは公表されておらず不透明なままです。

第五は、インターネットの影響です。中国でもインターネットで、事故に対する批判の書き込みがあいついでいるといいます。日本でも大手マスコミは原発ムラに汚染されていたわけで、もしフリージャーナリストの活動やインターネットによる世論がなければどのように報道されていたのでしょう。

メディアといえば、今回の中国の高速鉄道事故に関して、日本では新聞の一面を飾り、連日テレビでも報道されています。しかし、海外メディアも報道はしていますが、日本のメディアと比べてはるかに扱いが小さいことに気が付きます。

中国の高速鉄道の技術と比べ日本の新幹線技術の素晴らしさが強調されていますが、確かにそれは事実であり、中国の高速鉄道事故は中国のさまざまな問題を浮き彫りにしました。しかし、鉄道という視点で見てみるとどうでしょう。

日本での甚大な鉄道事故は1970年〜80年代にはなかったのですが、1991年には信楽高原鉄道で列車の正面衝突事故が起こり42名が死亡し、614名が重軽傷を負う大惨事が起こっています。また2005年には、JR西日本福知山線で脱線事故が起こり、107名の方が亡くなり、負傷者562名という大惨事が起こっています。そう考えると、確かに日本の鉄道技術は進んでいたとしても、謙虚に考え、中国の高速鉄道事故を日本では考えられない事故だとするのもどうかと感じます。今の技術にいたるまでには尊い犠牲があったのです。

図録▽戦後の主な鉄道事故 :
JR福知山線脱線事故 - Wikipedia :
信楽高原鐵道列車衝突事故 - Wikipedia :

中国が新幹線の特許申請を行ったことで日本が神経質になっていたことが日本での反応を大きくしたのかもしれませんが、ただ、今回の中国の高速鉄道事故が、鉄道技術は速い車両をつくる技術だけでなく、経営の思想、教育の方法、またダイヤの組み方、さまざまな安全システムや、線路のメンテナンスにいたる総合技術なのだという教訓を残してくれています。

また多くの分野で、産業が高度化するにつれ、モノの性能や品質だけでなく、むしろビジネスの仕組みづくりの優劣に競争の焦点が移ってきていることもあわせて考えたいものです。


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