
脱原発であれ、原発維持であっても、日本にとっては長期的には火力比率を下げることがエネルギーの安全保障上は重要な課題です。いずれにしても、資源を海外依存する日本にとって再生可能な自然エネルギー利用をできるだけ伸ばそうというのは、どの立場であってもその重要性を認める人が多いのですが、いざその促進に関してのアプローチは正反対です。
電力会社の地域独占体制を維持しようとするのなら、固定料金で電力買取りを行って、産業を育てようということになります。それよりも新規参入しやすい環境を整え、市場での競争によってイノベーションが起こってくることを促進しようというのなら電力自由化は避けられません。社会主義的に行うのか、マーケットでの競争原理を利用しようというのかでは考え方が全く違います。
しかし、国政では、「電力自由化」への抵抗が激しく、与野党ともに固定料金で電力買取をはかろうということになります。与党民主党は電力総連の支援、自民党は各電力会社からの支援を受けており、国会のなかで電力会社の利益に反する「電力自由化」がテーマになることはまずありません。
政治にも影響力のある経団連も電力会社との取引関係のある企業が多く「電力自由化」には猛反対です。マスコミも電力会社への気配りから、「電力自由化」についてつっこんだ報道を行うことはありません。国が10電力体制を変えることは至難の技かもしれません。
「電力自由化は日本の国会では無理」(民主党関係者)発言に脱力 - 木走日記 :
そんななかで、昨日、フジテレビ系列の関西テレビのローカル番組「スーパーニュース アンカー」で、「なぜ電力自由化が進まないか」を特集していて驚きました。
スーパーニュース アンカー|関西テレビ :
関西は、大阪府や奈良県、また大阪、京都、神戸、堺の政令都市が関電ではなく、NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガス出資の電力小売会社エネットから電力を購入しているということも背景にあるのかもしれません。電力を買ってもいない大阪府に関電から節電要請があったことで、橋下知事が反発したことはご存知の人も多いと思います。この間のやりとりで、地方自治体は、国政と違って電力会社の影響をあまり受けていないことを示したようです。
関西電力、電力不足でも大阪府庁の節電電力の買い取りを拒否:MyNewsJapan :
また関西では大阪ガスとマスコミの関係も深く、比較的マスコミが独自のスタンスを取りやすいのでしょう。
日本でも2000年から電力自由化が限定的に導入されていますが、いまだに電力会社以外からの供給量は電力需要の3%を切り、なかなか電力自由化は進んでいません。それでも電力料金を下げる効果があったことは以前にもアゴラで触れました。
「電力自由化」はやはりタブーなのか : アゴラ - ライブドアブログ :
政治家に限らず電力会社との関係が深い人も多く、電力会社のポジションから、「電力自由化」に反対する声も多いのですが、もし再生可能な自然エネルギーでの発電など、電力の多様化をはかろうとするのなら、「電力自由化」は避けられません。なぜなら、電力会社の地域独占体制は、電力への新規参入に対する高い障壁になっているからです。
どのような障壁でしょうか。ひとつは、どうしても送電網を電力会社に頼ることになりますが、それを利用する「託送料」が諸外国と比較すると高いこともあります。電気料金に占める託送料金の割合はアメリカが10%未満であるのに対し、日本では20%を超えています。しかし、それよりも問題は「インバランス料金」です。
電力は発電量と電力消費量が同じでなければなりませんが、現状では、事業者の電力供給が不足し、消費量をまかなえず、電力会社から電力を購入するとペナルティ料金がとられます。3%以内の不足なら8.45円/kWhですが、不足が3%を超えると夏季では76.49円、 その他の季節では49.08円/kWh、夜間であれば38.12円/kWhと 販売価格を大きく上回る料金を電力会社に支払わないといけません。しかし電力が余ったときはタダで電力会社が使えるのです。この障壁をまずは取り除くなり、緩和しないと電力自由化は進みません。
電力自由化というと、発送電の分離という話に究極はなりますが、むしろ電力小売業がビジネスをやりやすい環境整備として、インバランス料金を見直すほうが現実的だと思います。それこそ地方自治体でごみ処理施設などでの発電、また風力発電に取り組んでいるところも多く、地方から声を上げるとすれば、発送電の分離という大きな話はなじめず、むしろインバランス料金を見直しのほうが主張しやすいのではないでしょうか。
電力小売では、マンションの電力を電力会社との一括契約で料金を下げる電力ベンチャーも注目されていますが、発電と最終消費企業、あるいは消費者をつなぐ電力小売の存在が鍵になってきます。
関西からセカイを変革する企業 中央電力株式会社| MODERN VENTURE[モダンベンチャー] :
川上の発電だけを整備しても産業として発展する仕組みにはなりません。固定料金による全額買取は川上だけが成り立ちますが、それでは電力のビジネスの発展や進化にはつながりません。設備さえつくればいいという事業が成り立つというのでは、それは典型的な保護産業であり、そのビジネスが育つとは考えられないからです。むしろ新たな利権の温床ともなってきます。
川上の発電と、川下の電力小売がビジネスでつながるための規制緩和を行うことが、脱原発であれ、脱火力であれもっとも近道ではないでしょうか。それは地方からの異議申立てや、エネルギーの地方主権化でしか達成できないことかもしれません。
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