中国の周辺都市部で次々と反日デモが暴発し、スーパーや日本企業の施設を襲い、また日本車を襲うという騒乱状態にまで起こりましたが、騒乱が起こった各都市では、再び日本のスーパーなども営業を再開しているようです。
さらに反日デモの予告がなされていますが、いったいどこまで広がるのでしょうか。反日デモの経過やパターンを見ていると報道で伝えられている怖さや危うさと同時に、この反日デモの限界も感じます。
まず、この騒動が最初に起こったのは、西安、成都、鄭州3都市といわれています。寧波がどうだったかはほとんど報道がなく定かではないのですが、そして17日に綿陽、18日に武漢に飛び火しています。
この動きを見て、まず言えるのは、デモは同時にまた連続して起こったということは、それを計画的に組織化し、扇動している組織があるということです。自然発生ではなく、各地に広がっている同一の組織が起こしたことがわかります。呼びかけのビラや横断幕などがワンパターンであったことを見ても、それをうかがうことができます。
問題は、その組織の規模や力がどれぐらいかです。それぞれの騒乱の規模が大きいように感じますが、1960年代後半に起こった日本やフランスまたアメリカでかつて世界を揺るがした学生デモ、あるいは中国で起こった天安門広場での抗議行動と比べるとはるかに規模もエネルギーもはるかに小さいことがわかります。報道写真を見ても道路を埋め尽くしている範囲はそう広くありません。
また報道によるとデモ隊が猛スピードで走って移動し、ターゲットとした施設をつぎつぎに壊し、野次馬を集め、さらに騒動が広がったのですが、一台の車を倒した程度ということは、騒動に火をつけ扇動した組織の中枢の人数もさほど多くないこと感じます。
しかも、間違って漢族の衣装を着た女性の服を剥ぎ取ったり、なかにはニタニタ笑いながら騒動に加わる姿があったり、なによりも日本の報道機関が襲われるどころか、日本の報道インタビューまで受けているというのでは、それは怒りのエネルギーが爆発したというよりは、この騒動は日頃の憂さ晴らしの「反日祭り」でしかないということです。
さて、現在、重慶や南京などの7都市でデモが予告されていますが、予告通り騒動が広がるのでしょうか。デモを各地で実行しようとすると、この組織は全中国規模の広がりと、また横の連携をもった組織でなければなりません。さらに、そういった横の連携をもった組織だとしても、統制を強化しはじめた中国政府の規制をかいくぐって騒動を広げることは、もはや中国政府への挑戦ともなってきます。
中国政府としては、これ以上騒動が広がることは、人民元安やレアアースの実質的輸出制限などで国際的な視線が厳しくなってきているだけに、なんとしても抑えたいはずで、報道もさらに規制され、実際逮捕者のでた武漢も、それ以外の都市もデモが許可されなくなったようです。もし、予告通り実施され騒動が起こると、中国政府の統治能力がほころび始めたことになります。それはそれで海外からの中国市場への信用の揺らぎにもなってきます。
現在は、「少日本」と掲げられていることが示すように、GDPで日本を抜き、不満のはけ口として野次馬が「大国」となったとことで「祭り」に酔っている状態ですが、それはかつて日本も明治時代にそんなことで、人びとを酔わせ、軍部が暴走した歴史がありました。しかし、そんな歴史を同じように歩むことは、現代では通じません。なぜなら、経済のグルーバル化が進み、中国も世界の市場経済に組み込まれており、暴走して孤立化すると国内経済も成り立たなくなってくるからです。
この騒動が、社会からはみ出た人たちの「祭り」でしかなかっことは、成都での騒動が象徴的に物語っています。なによりも、襲われたイトーヨカドーは成都にさまざまな貢献を行ってきており、成都人民政府からも高く評価され、「労働模範」という称号まで得ているそうです。そんな企業が襲われるというのは、成都の政府が加担したり、普通の市民が加わった騒動ではなかったのでしょう。いくら「日本人は嫌い」だとしても、成都の政府や成都の市民がそういった動きをするとは思えません。
「労働模範」として地元市民に愛されている
成都イトーヨーカ堂への破壊行動は看過できない (莫邦富)
このデモの背景に、権力闘争があり、そのための示威行為だったのかどうかは憶測の域をでませんが、もしそうなら、もう結論はでており騒動を起こす必要性はなくなりました。また中国政府は、この騒動を日中間の外交カードに利用しましたが、あっさり日本政府の腰が折れてこちらも終わっています。これ以上騒動が起こることは、かえって中国の国内の不安定を世界に晒すことになります。
さて政治では中国政府も中国の反日活動家も日本を屈服させたと思っているでしょうが、そのツケはやがてやってきます。もういくら騒動を抑えても、「覆水盆に返らず」です。企業はリスクに極めて敏感です。おそらく、今回の騒動で、生産拠点の脱中国、ASEAN諸国への移設の動きが、静かに加速していくものと思います。
レアアースに輸出制限も、レアアースを使う企業の製造部門を中国に誘致し、技術移転をはかろうという動きでしょうが、そうは思い通りにはいかないのが市場経済です。
中国が輸出制限を行ない、価格が上がってききたために、採算がとれずにレアアース採掘を放棄した国や企業が動き出しはじめました。それに、技術移転する怖さを日本の企業はさんざ学んできています。こちらのほうも、波風を立てずに、静かになんらかの脱中国が起こってくるでしょう。中国はパートナーではなく、あくまでお客さんだという立ち位置に収まっていくのではないでしょうか。
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