イノベーションは、なにかの思い込みから抜け出した時に生まれてきます。しかし、残念ながら私たちは思い込みの世界の住人であって、なかなかいったん思い込んだことから抜けだせないというのが常です。
さて、昨日雑誌WEDGEを読んでいて、はっとしたコラムがありました。佐伯啓思教授の「いまこそ読み直すべき 民主主義を危惧したプラトン」です。
おそらく私も含め、ほとんどの人が、民主主義こそが現在のところ最高の政治形態だと考えています。しかし、民主主義も完璧なものではなく、民主主義でさえあれば国家が、また経済が発展するとは限りません。
民主主義への過信や民主主義こそ産業を発展させてきたという思い込みからでしょうか、中国は一党独裁の共産主義国家であり、民主主義でないから産業も発展しない、すぐにも破綻すると言い切った人たちがいました。しかし現実は違ったわけです。
そういった人たちの予想を裏切って、中国は未だに経済成長を続けています。しかも、今や不況に陥った世界経済の救世主として存在感を高めています。
だから、中国の共産主義が優れているとは決して思いませんが、今のところ、おそらく日本の経済の発展の歴史も参考にしながら取ってきた経済政策が成功したということです
しかし、中国もリスクを抱えています。日本が高度成長を終えた原因としては、円の切り上げ、また変動相場制に移ったことが大きかったのですが、もし、アメリカからの圧力で、人民元の切り上げとか、変動相場制への完全移行が行われれば、経済成長も腰折れする可能性は高く、forbesのこの記事も一理ありという感じでしょうか。
クルーグマン教授の人民元に関する主張が正しくない理由
さて、プラトンが警鐘し、また佐伯教授が危惧していらっしゃるのは、民主主義は、民意、つまり人びとが求めることで政治が動きますが、それはかならずしも人びとにとって必要なことと一致するとは限らないということです。
しかも、民主主義のリスクは、人びとにとって耳障りの良いことにで民意が動く、いわゆるポピュリズムに流れることもあるということです。情報化の発展は、さらにそれを加速する方向に働きはじめています。選挙でなくとも、世論調査結果が報じられ、その動向に政治は敏感です。
小泉劇場につづいて、いまは民主党劇場だということを書いたこともありますが、そうして政治がどんどん劇場化してきます。
昨日の深夜にNHKで小泉さんと小沢さんの足跡を追ったドキュメンタリ番組がありました。民主党が小泉政権時代はそれこそ改革派であり、「改革」という同じ土俵で、まるで「元祖」を競う土産物のように、改革をすすめられるのはこちらだと闘ったために選挙で大きく敗北しました。もしマーケティング・センスがあれば、そんな選挙はしなかったはずです。
しかし、その失敗の反省から、「国民の生活重視」という政策に転換し、自らのポジショニングを変えたことにも焦点をあてていました。そして、まるでマーケティングの教科書のような戦略転換が総選挙での大勝につながりました。
政権をとるためには、人びとの支持をえなければならず、競争戦略としては、政党の基本路線まで変わるということです。鳩山総理の献金問題がある、郵政は逆戻りだ、また成長戦略が見えないという批判があっても、高い支持率を保っているのは、民主党よりも「国民のための政治」をやってくれそうな政党を国民が見いだせないからでしょう。
さて、成長戦略が重要だという声は、ネットでも、マスコミからも、マスコミに登場する識者からも聞こえてくるのですが、それこそ長期的には国民の利益になったとしても、国家のための政治という色合いが濃いと思います。
成長戦略はどうあるべきかというと必ずしも同じではありません。なにか技術オリンピックをやるということを考えているひととか、特定分野に助成金をばらまくとか、税制で優遇するといったことを想定している人もきっとすくなくないと思います。しかし、本質は新しい産業が生まれてくる、あるいは、非効率な産業にとってかわる、より効率的な産業が生まれてくることを促すことにあり、規制緩和による効果が大きいと思います。地方主権化も、大きな規制緩和です。規制するかどうか、あるいはどのような規制をするかどうかを国から地方に移すことです。きっと、与野党の政治家のなかでもそう思っている人はすくなからずいると思います。
しかし現実には、規制緩和をもっと加速しようという具体的な動きや働きかけは、与野党のいずれからもほとんど聞こえてきません。
おそらく、現在は「規制緩和=悪」という風潮や思い込みが生まれていること、それを政策実行するには、官の事業の無駄を排除する事業仕分けよりははるかに、既得権をもつ「官」や「業」あるいは団体からの強い抵抗があり、そうとうエネルギーが必要だと言うこと、また人びとにとって、これまでの体験もなく、なかなか実感できない問題であるだけに、すぐさま支持率アップや票に直結しそうになく進まないということでしょう。
規制緩和は、長期的には国民の利益として還元される「国家にとって必要なこと」のひとつだと思いますし、ほんとうの政治主導というのは、きっと、そういった長期的に「国民のための政治」につながる「国家のための政治」をいかに政策として掲げ、実行していけるのかにあるのでしょうね。
そういった課題に政治がチャレンジすることに火をつける大きな役割を担っているのは、マスコミかもしれません。日本の常識、世界の非常識となっている、しかも成長を阻害しているさまざまな規制について、どこか腰をすえて、長期的に特集を組んでもらえないものかと思いますが、マスコミも規制と利権の恩恵を被っているのでやりづらいということでしょうか。
政党戦略がないというお題目を唱えるだけでは、ちょっとそれも現実味がありませんね。
応援クリックよろしくお願いします
簡単導入! ネットで利用する営業支援システム
美味しい飲み比べセットあります。酒米王様「山田錦」で仕込んだ至高の飲み比べ違いを感じてみ... |
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。