2008年10〜12月期の実質GDPの落ち込みが、金融危機の震源地であるアメリカやヨーロッパよりも日本のほうが大きいことが意外だと思っている人もいらっしゃるようです。池田信夫Blogで、なぜアメリカよりも日本経済のダメージが大きいのかについて2つの記事が書かれていました。
外需の影響
日本経済のダメージはなぜアメリカより大きいのか
読むと、日本の輸出のGDP比は、15%程度で小さいから影響はないのじゃないかという疑問がコメントで寄せられていたそうです。そんなコメントを寄せた方に限らず、麻生さんや与謝野さんが、当初かなり楽観的な発言をされていたことから推し量ると、日本は輸出が不振になると経済がガタガタになる産業構造になってしまっていたことをよくご理解されていなかったのじゃないかという気がします。
ではなぜGDPの15%しか占めていない輸出が、海外の需要が減少すると、先進国でもっともダメージを受ける結果になったのでしょうか。
第1回目の池田信夫blogの外需の影響で、輸出の波及効果の大きさを示す「外国貿易乗数」という専門用語を使いながら説明されていたので、ちょっと分かりづらいと思うのですが、「輸出産業の部品を国内で調達する比率が高い」からだと説明されています。まあそんな感じでしょうか。というか、実際は影響を受けるのは部品に止まらないのです。このブログではより分かりやすく説明してみましょう。
日本の輸出というと自動車や液晶テレビ、またその他のデジタル家電が思い浮かびますが、そういった製品が輸出されると、輸出として貿易統計にカウントされるのですが、ご存じのようにそれらの製品で使われる部品や素材などは日本国内から調達されているものが多いのです。
日本のメーカーに限らず、たとえば液晶テレビをとっても、サムスンなどの韓国のメーカーでも、部品や素材は圧倒的に日本から調達されています。それだけ、高品質で、技術力のある部品メーカーや素材メーカーが日本にあるということです。
たとえば、ネジを製造し、国内のブレーキ部品メーカーに納め、そのブレーキ部品メーカーがトヨタに納めたとすると、そのネジも、ブレーキ部品も国内需要です。
海外での自動車の売上げが大きく減少すると、自動車の生産が止まり、ブレーキ部品も、その部品で使うネジも発注されなくなります。ネジの生産が止まると、そのネジを納品するための輸送トラックも、ブレーク部品を納める輸送トラックも仕事を失います。さらに、ネジをつくるための材料も、生産ラインを動かす光熱費も減ってしまいます。自動車にも、デジタル家電にもプラスチックがたくさん使われているので、そのプラスチックの成型メーカーも、その原料となる化学品のメーカーも仕事が減ります。
設備のメンテナンスに必要な部品やサービスも止まります。工場は自動化が進んでいますが、それらを動かすソフトウェアの開発プロジェクトも中されてしまったかもしれません。それまでは得意先や社内の接待などで夜にいっていた店にも行かなくなり、店の売上げもダウンします。タクシーの利用も減ります。
製造業というと、トンカチやっている産業だと想像している人もいらっしゃるようですが、製造業といっても、今日では、多くのモノやサービス、そしてソフトが集積して成り立っているのです。
海外での需要が止まると、そうやって次々に国内のさまざまな産業に連鎖反応のように影響がでてきます。親亀こけたら皆こけたという状態になるのです。
ヨーロッパではドイツがやはり輸出が多い国であり、比較大きな影響を受けていますが、おそらく部品や素材を国内から調達している比率が日本よりも小さいのと、自動車やデジタル家電のように激しい需要減とならなかった産業構造だったからでしょう。ドイツといえば基幹ソフト世界ナンバーワンのSAPもあり、それこそドイツワインもありますね。
日本は、円安も手伝って輸出が好調となり、国内産業といえども輸出産業に頼る体質ができあがってしまったために、よけいに打撃が大きいのです。またさらに産業の裾野の広い、建築や住宅産業も酷い状態です。
このブログでは、小泉・竹中ラインで進めた経済政策が、国内の消費市場の活性化よりは、輸出産業を優先する政策を進めてきたことを幾度か批判したことがありました。それは途上国型の政策であり、外需の影響を受けやすい危ない構造をさらに拡大する政策だったからです。優先順位を間違っていました。
だから、いざなぎ景気を超える長期の好景気があっても、多くの人が実感できなかったのです。人びとの所得が伸びないために国内消費が伸びず、国内消費で成り立っている国内産業は好景気にだといわれても、デフレに悩み、また売上も伸びない、利益もでないという企業が多かったと思います。
さて、日本が再び活力を持つためには、自動車やデジタル家電、工作機械などの輸出が回復するか、基本的には生産性が高く、国際競争力も高い産業を育てるか、今は国際水準から比べて生産性の低いサービス業の生産性を高めるとか、国内消費を伸ばすために所得を上げることになってきますが、所得はいくら定額給付金を配っても落ち込みのほうが大きく、いずれも時間がかかりそうですが、お互い知恵を絞って生き残る算段を考えましょう。新しい価値づくりにみんなの意識が向かったほうが経済効果が大きいかもしれませんからね。
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と云うことで嗤われていますよw