道路となると利権がからむだけに抵抗もすさまじく、また国土交通省の悪知恵でしょうか、国民を欺くような議論も増えてきています。
まずはガソリン価格が日本はOECD諸国29カ国のなかでは23位と安い方であり、税負担率が24位と、税金が安いからだと町村官房長官がわざわざフリップを使って説明がありましたが、これは正しくありません。
それは消費税率が低いからで、ガソリン税そのものは40.1%で、OECD各国の中では、ほぼ真ん中あたりです。
他の国のほとんどは高速道路はタダですから、そちらも税金と同じ事ですから、その負担を考えると決して安いとは言えません。
>>OECD諸国のガソリン1リットル当たりの価格と税(2006年第2四半期)

それ以外でも生活道路ができなくなるとか、開かずの踏切が解消できないとか、あの手この手の議論がでてきますが、それがいくらぐらいを占めるのかという根拠の提示もなく、ムダな高速道路かどうかの精査もないのでないので説得力がありません。

道路に関しては民主党も一枚岩とはいかないようです。与党でも温度差を感じますが、たまたま和歌山出身の民主党の国会議員さんが、口角泡を飛ばして和歌山には道路が必要だ、だから暫定税率は延長しないといけないと主張されています。反旗を掲げたわけで目立ちますね。

しかし、もっともらしい主張のようで、疑問に感じるのは、あの「道路王国和歌山」にこれ以上道路を造ってどんな経済効果を生むというのでしょうか。
確かに首都圏のように都市集中化が激しく、道路インフラがついて行っていないところには道路が必要だというのは分かるのですが、和歌山にドライブに行くと道路の整備のよさに驚かされてしまいます。
こんなところまで舗装するのかというほど立派な道路が張り巡らされ、10分走ってもすれ違う車は数台、酷いところではすれ違う車もないという道路がたくさんあり、そこにまだ道路をつくると言うと奇異に感じます。

和歌山をなんとかしたいという気持ちは分かりますが、和歌山経済が斜陽化しているのは基本的には古い化学工業や鉄鋼、またローテクの零細な工業の比率が高く、時代変化に適応できていないからであり、新しい産業が道路で興せる、あるいは誘致できるわけがありません。
地方に行くとあちらこちらに、工業団地の空き地が目立ちますが、箱物や道路の限界を象徴しています。本末転倒の議論なのです。

和歌山の産業については素人ですが、和歌山は自然に恵まれ、温泉もあり、いい観光地です。ではどんどん道路をつくって観光産業が伸びたのでしょうか。
そこでまず思い浮かべるのはグリーンピア南紀の失敗です。グリーンピア南紀は道路が整備されていないために失敗したわけではありません。計画も経営もいい加減だったからです。
道路事情でいうと、和歌山は大阪から今は最大の観光地白浜まで高速道路が開通しましたが、経済効果どころか、高速道路ができたために国道の通行量が激減し、国道沿いの店は気の毒なほど寂れてしまいました。シャッターを閉めてしまったところが目立ちます。道路のおかげで廃業に追い込まれたところがかなりあるのではないかと感じます。

和歌山は、白浜などの海岸線側だけでなく、熊野古道であるとか、高野山とか、龍神など山間部でも人気の高い観光地を抱えているのですが、少なくとも宿泊数では、逆に減少傾向を示しています。

白浜は料金の値下げ、閉鎖施設の再開などでやっと少し持ち直したようですが、道路が良くなったためにかえって日帰り客が増えたということではないかと推察します。これは昨年訪れた新潟もそうでした。道路がよくなると、日帰り客が増え、お金を落とさなくなるという逆効果もあるのです。
和歌山観光宿泊人数
資料:県観光振興課「観光客動態調査報告書」

道路、道路と叫ぶ前にもっとなすべきことはたくさんあるはずで、本質的な課題から目をそらし、目先の道路工事と用地収用のお金を当てにしていては地方の未来は感じられませんね。

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