暫定税率延長が認められなければ、生活道路もできず、また道路の維持も、公共工事も止まってしまうという話がまことしやかに語られていますが、小泉改革でムダな道路は造らないという約束が反故にされようとしているということをもっとマスコミは切り込まないといけません。ウェッジ2月号の羅針盤で慶応大学の加藤教授が指摘されていますが、どうも踏み込みがたらず自民と民主の政局にもちこまれた議論をそのまま報道しているにすぎまないように感じます。暫定税率延長の背景に、道路を官僚と道路利権に群がっている政治家、また地方がなにをしようとしているのかをもっと報道しないとマスコミの価値はありません。

日本は道路に関してはすでに世界では異常に突出した整備を行っており、アメリカの4倍以上ですが、ご承知のように地方分散が進んでおり、都市間をむすぶことが極めて重要なEU各国と比較してもおよそ2倍の道路密度です。
>>世界の道路統計(PDF資料)

にもかかわらず、暫定税率を延長し、道路特定財源として塩漬けして、さらに道路を造ろうということですが、これまで教育や福祉にではなく、道路建設に突出した支出を行って巨額の借金をさらに増やそうということであり、さらに次世代に整備しすぎた道路を補修するという膨大なコストを残していくことになります。
さらに、地方が道路を造れば経済が繁栄するかというと逆です。日本はどんどん道路を造り世界一の道路整備を行ったにもかかわらず、都市集中化と地方の衰退が進んだという事実から目をそらしてはいけないのです。

小売業に携わっている人ならよくご存じだと思うのですが、商業施設や産業が集積している経済力の大きい都市と経済力の弱い都市を、道路や新幹線で結ぶとなにが起こるかですが、弱い都市の経済をどんどん強い都市が吸引していくという現象が起こります。スポイト現象ともいいます。それを象徴するように、まるで廃墟のようになった新幹線の駅がありますね。
それだけでなく、道路が整備されると、それまでは不便であったところがいい立地となり資本力のある企業が大きなショッピングセンターをつくり、地元の経済を根こそぎ奪います。先に触れたEU各国のことを考えると、地方経済発展の原動力は道路とは違うところにあると考えるのが普通でしょう。

道路建設でメリットがあるのは、土木の会社と、土地を収用されそれでお金が入ってくる人たち、またそれらの人びとと金銭的な利権や業界からの選挙の票を狙う政治家、そしてふんだんな予算を湯水のように使える官僚と役人ぐらいではないかと思います。
そろそろ目覚めたらどうでしょうね。日本は、金融や知的資産による収入で豊かさを実現していくという段階に入ってきていますが、その鍵を握っている「人」に投資し育てるのではなく、なにも生み出さずコスト負担になるだけの道路をもっとつくろうというのですから、日本売りは絶対止まりません。
暫定税率延長に隠れて道路をつくるという姑息な方法ではなく、環境が重要なら、環境税を新たに導入するという正道を歩むべきじゃないでしょううか。

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