今年上半期の国際収支の速報が今月半ばに発表されていましたが、経常収支が12兆4,702億円の黒字と過去最高の記録でした。サービス収支は慢性的に赤字ですが、投資収益としての所得収支が8兆4,614億円の黒字、モノの輸出入での貿易収支は5兆8,612億円の黒字と安定的に黒字体質が維持できています。
>>経常黒字最高の12兆円…海外投資の収益拡大寄与

国際収支の好調さが、日本経済の緩やかな成長を持続させてきているのでしょうが、問題は内需が弱く、国内がいっこうに元気になってきません。
所得収支のほうは健全だとしても、貿易のほうはアジア経済の好調さに支えられての結果でしょうが、中国がくしゃみをしたら危ないかなって状態ですね。
それにしても、素材や部品、産業用機械などは好調とはいえ、「日本ブランド」はあまり好調とはいえなくなってきているのが気になります。良いのは自動車と任天堂ぐらいでしょうか。

ついこの間までデジタル家電が絶好調でしたが、どんどんシェアを落とし、「日本ブランド」が世界で50%以上を保っているのはデジカメだけとなってしまいました。それを反映するように、ビジネスウィークが毎年発表しているグローバル・ブランド・ランキング100でも、トヨタ7位、ホンダが19位と上位に来ていますが、デジタル家電としては、サムスンが20位で、SONYがやっと26位に来る程度です。

世界に通じるブランドが少なくとも、技術が問われる地味な分野で稼げるというのも悪くはないことですし、所得収支との両輪で稼げるというのはいいとしても、国内消費が弱く、こういった国際収支の黒字頼みというのは、先進国では珍しいですね。決して健全ではありません。雇用は圧倒的に国内消費で支えられているわけですから、国内消費が伸びないと経済の成長実感や景気のよくなったという実感は生まれてきません。
この内需の弱さを『Espresso Diary@信州松本』の斉藤さんが、
「日本の内需が強くなるために必要なこと」 多様性の弱さに原因を求める視点をお持ちですが全く同感です。
なぜ日本の内需が弱いか?といえば、ひとつには少子高齢化の影響なんすが、もうひとつ多様性の弱さも理由だと思います。戦後の日本には「強盗慶太」と呼ばれた東急の五島慶太や、「ピストル康次郎」と怖れられた西武の堤康次郎のように、毀誉褒貶が入り混じる経営者が目立ちました。小学校しか出ていない経営者もいれば、学究の世界と深く関わるタイプの社長もいた。ところが戦後も60年以上が経ち、いつの間にか、同じような背景、同じような学歴、同じような人生を歩んできた人ばかりが経営者になって、異質な価値観が入り混じる傾向が弱くなっているのではないか。いわば「血のない世襲」のような現象が進んでいるように思えます。

アジア経済の強みは、多様な人生を歩んできた膨大な人々が混じり合って生まれるエネルギー。インドの秀才がシンガポールで学び、台湾の野心家が中国本土でインスタントのラーメンを売る。もしも日本に可能性を見出そうとするのなら、内なる多様さを強く肯定して地域性を重視するか?あるいは意識を外に向けて多様な人々の活力を注入するか?のどちらかしかないと思うのですが、そのいずれもが東京のメディアでは多数の意見になっているようには見えない。明日も東証の株価は、パッとしないでしょう。東京の株価が大きく強く上昇するためにはハイブリッドな日本に転換する必要があると思いますが、それには時間がかかりそうです。
平均的で均一な社会からはダイナミックなエネルギーは生まれてきません。しかも政治家の世界が封建制の時代に逆戻りしたようになって
政治のパワーもどんどん落ちてきてしまいました。東京に政治も経済も情報も一極集中してしまったツケがじわじわやってきているともいえますが、まあ世の中を嘆いてもしかたないので、大きいことがいいことという価値観からまずは卒業して、多様な豊かさを追求すること、付加価値を追求することへと意識転換することから始めるしかないですね。多様で面白いビジネスを広げるためにも、小さくともきらりと光るブランドをテーマにした仕事をもっとしてみたいと感じる今日この頃です。

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