今回のWBCは、イチローの「今度のWBCで、戦った相手が“向こう30年は日本に手は出せないな”という感じで勝ちたいと思う」という発言がイチローに対する韓国応援団のブーイングとなり、また予選では全勝の韓国が3敗の日本に負けたことで決勝進出を逃したこともあり、韓国の人たちが複雑な感情を抱いたとしても当然といえるかもしれません。
とくにルールとはいえ、2勝した日本に1敗しただけで決勝にいけなかったことが理不尽だという感情は、
キューバ 「1回だけ負けた韓国が脱落して、3回負けた日本が決勝の相手って本当?」
審判 「ややこしいなあ」
という風刺画が良く語っています。
これは日韓が逆の立場であれば日本でもそういった不満は残ったでしょう。しかし、朝鮮日報日本語版を見ると案外冷静な報道姿勢だという印象を受けます。日本に対する複雑な気持ちは窺えるにせよ、露骨に反日感情を煽る記事はほとんどないという印象を受けます。保守系で日本にも多数の特派員を派遣している朝鮮日報だからということもあるかもしれませんが、韓国最大の発行部数がある新聞なので、ごく少数の意見だとはいえないように思えます。
■結果評価は高い
野球の歴史が長い日本、また野球の聖地ともいえるアメリカを下し、全勝で準決勝に臨んだ韓国は、「韓国は強い」という評価を内外に焼き付けたことは否定できません。だから、日本に負け、決勝進出できなかった悔しさはあり、選手を兵役免除にしたのが早すぎたという声もあるにしても、韓国の人びとは選手はよくやったという評価で「兵役免除に賛成」79.4%という世論調査結果となっています。
金監督が、優勝した日本チームを「日本は素晴らしい戦力持ったチーム」とコメントしていることも、逆に日韓の差が接近してきたという認識があるからともいえるのかもしれません。
また「日本から学ぶべきこと多い」というこんな記事もありました。
攻守両面にわたってスピードを重要視する試合運びは、投打だけに頼らない日本野球の強さを見せ付けた。日本野球は速い足を利用した内野安打と走者たちの作戦遂行能力で簡単に得点に結びつける。なかなか得点に結びつけられない韓国野球が学ぶべき部分だ。日本選手らの速い足を利用した守備範囲の広さも、韓国選手らにとってはやはり学ぶべき点だ。
こういう冷静さを保っている韓国こそ、ますます日本にとっては侮れないライバルになってきたということではないかと思えます。
■イチロー発言に関して
イチローの発言が韓国の選手の闘志に火をつけたということですが「イチロー、韓国を挑発?…その真意は」でこう報道しています。
事実上、韓国に向けての発言と受取られる。日本代表チームの戦力がアジアNo.1であるという自信とともに、韓国や台湾などが日本を克服するには力不足だという考えを表明したものだ。
WBCに臨む日本の目標意識を端的に示す発言とも言える。日本はアジア予選を軽く通過した後、米国で開かれる本戦で悪くてもベスト4、さらには優勝までも目論んでいる。「世界最強」を夢見ているだけに、韓国代表チームが目に入るわけがない。
金監督は極めて冷静だったようで、「イチロー発言は危機感の表れ」によると「考え方によっては、意識的な発言かも知れない。静かにしていることが最善策だ」として、選手達に落ち着くように求めたといいます。
また同紙の日本特派員の「日本で言う「最大のライバルは韓国」の意味」のこんな記事も面白い。
約120年前、脱亜入欧(アジアの狭い垣根を脱し、ヨーロッパすなわち先進国の隊列に加わるとの意味)を唱えた日本らしく、野球の目もアジアではなく、メジャーに」向けられており「韓国野球を低く見ているというより、彼らの目が高いという表現が適切のようだ
■これが大人の意見です。
このWBC予選に先立って、ロッテとの練習試合を終えたWBC韓国代表チームの選手6名が、日本代表チーム対日本プロ選抜チームの壮行試合を見学したそうですが、日本の国歌が場内に響きわたった時にとった態度をやんわり諫めている韓国代表と「君が代」という記事がありました。
この日、スタンドの日本人客は韓国選手たちの行動を見てどう考えたろうか。少なくとも「韓国はやっぱり日本の敵だ」とは思わなかっただろう。多分「礼儀を知らない人たちだな」くらいだったのではないだろうか。日本の選手が韓国の蚕室スタジアムで同じ行動をしたら、韓国の観衆もまったく同じように思ったはずだ。■互いに、いいライバルでありたい
国家代表としての責任感と日本戦を控えている覚悟が心の余裕をなくしたようだ。そのうえ韓国が日本の植民地統治に反対した独立運動記念日(3/1)も目前に迫った微妙な時期だから「君が代」が響く状況でのすっきりしない態度も理解できる。しかし日本の国歌演奏に韓国選手たちだけが座っていたということは、多少偏狭な印象を与えるに十分だった。
準決勝の日韓戦は日本の選手達は真剣でした。そのことを松中選手のヘッドスライディングの後に二塁ベースを叩いた姿が象徴していました。また日本中が固唾を呑んで試合を見守り、最高視聴率が50%を超えたということは、とりもなおさず韓国の実力を選手も日本の人びとも認めたということでしょう。ともに全力で闘いあうということ、大人の関係でライバルとして競い合ったからこそ緊迫したいい試合となりました。そういった関係こそ、ほんとうの友好関係、また国民感情のわだかまりを氷解させることにつながっていくと思いたいものです。
スポーツの世界は、相手を認め、また相手を畏れるから全力で戦うのです。そして闘いが終わったときは、敵味方のないノーサイドです。
WBC韓国代表として本塁打&打点の大会2冠王に輝いた李選手が、巨人の4番打者としてオープン戦に初登場し2安打2打点でしたが、李選手がどれだけ日本で成果を残し人気を集めるのかも注目されるところです。
サッカーのワールドカップ共催と同じように、今回のWBCも日韓の国民感情を改善する大きな役割を果たすことを心から祈りたいものです。さて、みなさまはどうお感じになりましたか。
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