朝日新聞に東京地検・伊藤鉄男次席検事の「証券取引を害する重大な法律違反があることが明らかになった」という取材によるコメントが掲載されています。この言葉の響きは重いものを感じます。ものものしい捜査や逮捕劇、逐一マスコミへ情報を提供しマスコミをも動員する動きは、東京地検のなみなみならぬ決意を表明ということでしょう。
ライブドアは整理ポストにはいり、上場廃止も濃厚になってきました。これで22万人といわれる個人株主は大きな損害を被ります。売るに売れません。しかし、それも株式市場の掟でありいたしかたありません。しばらくライブドアをめぐって、また株式市場についてのさまざまな論議が展開されるでしょうが、いきすぎたマネーゲームは終わるのでしょうか。さて、この間に、テレビにでていたコメンテーターの人たちが、IT関連企業の中ではライブドアだけが特殊であり、その他のIT関連企業を同じに扱うことはできないということを異口同音に言っていましたが、そういった段階から卒業した会社もあれば、実際にはいまだに経営が異常に高い時価総額を利用したM&Aで成長しているにすぎない会社がまだあるように感じます。
株の高値は、将来への期待値ということですが、見るべき技術もなく、国際競争力もない、しかもITといいながら情報システムも不備であり、しばしば問題も起こす。そんな会社に将来を見据えて、時価総額に匹敵する価値があるわけがありません。いずれ、ち些細なことが引き金になって、そんなバブルが崩壊しても不思議ではありません。
確かに、時価総額も企業価値のひとつであり、株価を上げる経営努力を決して否定しませんが、逆に言えば時価総額は企業価値を決めるほんのひとつの要素にすぎないということも事実であり、今回のライブドアショックを教訓として欲しいものです。
実際、アメリカでは60年代後半に、株価と配当の至上主義の「反経営革命」といわれる流れが起こり、製造業の研究開発投資が細っていくと同時に、製造業がことごとく衰退していきます。イギリスでも同様です。
利益や配当至上主義のいきすぎたファンドも不健全さを感じます。株価の売買で儲けるだけならまだしも、経営に口をはさみ、企業の将来価値をも食いつぶすというところまでいくとハゲタカと呼ばれてもしかたありません。国会や行政が手を付けず、グレーゾーンでやってきた会社にたいして、東京地検は噂されているように捜査を断行するのでしょうか。
さて、ライブドアショックは国会にも波紋をよんでいます。きっと野党は元気を取り戻すでしょうが、それよりは、与党内での小泉さんのリーダーシップが急速に衰え与党内が不安定になっていく気配が見え隠れしはじめました。塩爺こと元財務大臣の塩川さんがご指摘されるように、任期終了で首相を辞めるといった時点で、リーダーシップは失われてしまったのです。憶測ですが今回の東京地検の動きも、そういった力関係の変化があったからできたことかもしれません。耐震偽装問題、ライブドアショック、BSE問題の3点セットがさらに流動化を加速させるのではないでしょうか。
しかし、まかり間違っても「構造改革」をゆるめることは、官僚支配でいきづまってしまった日本の再生を遅らせることになります。問題は、構造改革、また規制緩和が悪いのではなく、耐震強度偽装問題にしても、ライブドアショックにしても、無防備でルールがなくレフリーがいないままに市場の自由競争に丸投げした結果でしょう。
ルールとレフリーのない競争は、さまざまな不公正、さなざまな不正を生みだしてしまうということです。日本の構造改革を進めていくためには、国会や行政がもっと知恵を絞って、働かないとといけません。官僚への番人も不在であり、いまだに無駄な巨額の公共事業が積み重ねられているという現実もあります。
構造改革を叫ぶだけなら誰でもできます。叫ぶだけでなく、同時にしっかりした制度設計や運用の仕組みづくりをやってもらいたいものです。

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