不思議な事件です。なによりも不思議だったのは、耐震強度偽造を行った姉歯一級建築士が無表情に、淡々と取材を受けている姿でした。

「設計書類を再チェックすると、すぐに気づきますよ。専門家ならパッと見れば分かる。率直に言って、指定確認検査機関がしっかり見ていなかったのではないか」

そんな言葉がでてきたことには正直言って誰しも驚いてしまったのではないでしょうか。事件はどこか遠くで起こっているようで、当事者意識がまったく感じられません。
なぜ逮捕されないのかと思いました。意図的な偽造です。いつもなら事件が起こると、まるで自分が正義の代表者だとばかりに噛みつく報道記者も、肩すかしを食らったように静かに取材している様子も不思議でした。やっと昨日、国交省が、姉歯建築設計事務所と、同事務所に構造計算を委託した設計業者6社を、今月中にも建築基準法違反の疑いで刑事告発する方針を固めたそうですが、いったいどれほどの罪なのでしょうか。それにきっと設計業者の6社で終わる事件ではないでしょうし、それで終わるようなら社会不安は収まりません。

被害者救済と事件の解明を急いでもらいたいところですが、そもそも、なぜこういった事件が起こってしまったのかです。検査ってお役所がしてたんじゃないのかと思って調べると、平成10年の建築基準法の改正からだそうです。ここに民間確認検査機関のリストがあります。そのなかに今回問題になっているイーホムズもあったので、ホームページを見てみると、今回の事件への釈明がなされています。しかし、いかに釈明しても、1件だけとかいうのなら、うっかり見逃していましたという言い訳もきくかもしれないですが、何件もあるとなると、じゃあ偽造が見抜けなかったということは、検査する能力がなかったのじゃないかといいたくなります。「専門家ならパッと見れば分かる」という姉歯建築士の話を信じるとしたら、すくなくともそう思えます。
検査の民営化に反対はしませんし、お役所が検査機関に仕事を投げたのはいいとして、しっかりとした検査が担保されるしくみがあったのでしょうか。検査機関の能力は大丈夫かとか、検査に手を抜いていないかとか、検査機関が建築主からの独立性を保っているかとかのチェックはしてきたのでしょうか。民間なら、当然仕事が欲しいあまりに建築主のいいなりになるってことだって普通に考えれば想定できます。
なにか盲点をつかれたよう事件であればいいのですが、どうも起こるべくして起こったのじゃないかという疑いを捨て切れません。このしくみを考えたお厄人さんも釈明すべきでしょう。誰なんですか責任者は。自分とは関係ないというのであれば、あの姉歯建築士と同じですね。
今回の事件は、民営化すればなんでもよくなるという風潮がありますが、民営化することのリスクだってあるわけで、民営化がなんでも解決するという宗教への警鐘とも受け取れなくもないですね。

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