日経の論調がどうかというのは、堀江さんなりの感じかたもあるでしょうが、「今日の『大機小機』なんて、ほとんど週刊新潮並のゴシップ記事だ」というのは、どうも日経の「大機小機」が編集部の記事かなにかのような誤解があるように感じます。
あらためて説明するまでもないことだとは思いますが、このコラムはさまざまな分野の著名人、論客の方がペンネームで投稿されているコラムであり、日経の記者とか編集部が書いているのではないことぐらいは教えてあげる人が社内にいなかったのでしょうか。
まあ、それはどうでもいいとして、堀江さんが問題にしているのは「村上ファンドと民主主義」というコラムですが、「盤側」のペンネームでした。
読んでみたのですが、堀江さんは明らかに読み間違えています。この「盤側」氏の意見に諸手を挙げて賛成かどうかは別にして、堀江さんは「(村上ファンドという会社は)家庭的な雰囲気だし、村上さん自体は、私なんかよりよっぽど家族愛、人間愛の人だと思います」と書いていますが、書かれているのは、就職案内みたいな職場の雰囲気とか村上さんのキャラクターの問題じゃないと思いますね。村上ファンドの組織の目的とかあり方がどうなのかと問いかけているということでしょう。頭の良い堀江さんとしてはうかつです。以下の引用部分をよくお読みください。
なによりも問題なのは、村上ファンドはモノを作らない、サービスを提供しない。従業員も最小限の管理的職員しかいない。従って取引先も顧客もいない。出資者も少人数で匿名だ。ファンド運営者としての村上氏は、匿名の出資者のために利益の最大化を図るべき法的義務を負っている。それが事業目的という特殊な組織なのだ。
対する阪神電鉄には無数の利用者がいる。多くの取引先、授業員、株主がいる。阪神球団にはこれを愛する無数のファンがいる。もとより野球の運営にかかわる多くの人がいる。いろいろと文句はあっても、そこには無数の人間の営みがある。そこには無数の人間の営みがある。人間社会、市民社会そのものがそこにはある。それを人間のにおいのしないポッと出の組織が支配する。
堀江さんの考え方は違うかもしれないし、この「盤側」氏は、かなり辛口だとしても、なかなか骨のあるコメントです。もっとしっかり読み込むのが礼儀と言うか作法ではないでしょうか。その程度の読解力は堀江さんにはあるはずです。
ちなみに、堀江さんが、頭に血が上ってもおかしくないとしたらこっちのほうではないでしょうか。同じ「盤側」氏の平成17年3月15日号のもので最近のじゃないですよ。こちらから拾ってきました。日付からしても、「テレビ東京などのグループ会社の防衛という意味の経営判断で反村上ファンド、楽天を決めたそうなのだ」という堀江さんの憶測と「盤側」氏は関係がないことが分かります。
株券の印刷が間に合わず、売り手が株券の受け渡しができないことを見越して、百対一の株式分割を繰り返したのが今話題の企業である。百対一の株式分割をすれば株価は百分の一になるはずが十八倍にもなる。下がる時期も分かっているから往復で大もうけだ。こんなのはたった今でも違法に決まっているようなものだが、現実には適法とされ、しかし問題だから改正が必要とのことだ。
金融弁護士と金融庁に任せておくと、今やっていることは皆、適法とされる。米国は不公正取引を網羅的に捕まえる包括規定が大活躍するため、やましい行為に対する抑止力が働く。日本にもある包括規定を活用すれば、こうした行為はたった今違法だ。
「適法だが問題だから法改正」との見解は、害されている被害や損われている価値の回復や救済は行なわないことを意味する。司法が勇断を示さない限り、日本の資本市場、企業社会の劣化はとどまるところを知らないだろう。
耳の痛いことにも耳を傾けるのが経営者だと思いますが、それぐらいの度量は身につけて欲しいですね。以前書いたように「名経営者が、なぜ失敗するのか?」に書かれている道をまっしぐらに突き進んでいる堀江さんですが、大丈夫なのでしょうか。
![]() 美味しい飲み比べセットあります。酒米王様「山田錦」で仕込んだ至高の飲み比べ違いを感じてみ... |
「掲載判断」は「よっぽどヤバイ」内容でない限り発動されることはないので、アレをもって日経の見解と見做すのはどうか、というのが先述の趣旨です。
「よっぽどヤバイ」というのは、内容に明らかな事実誤認があるなり、差別発言などの社会的禁則コードにひっかかる内容のことを指します。「笑止」なのはこのシステムの運用上、「ヤバイ」うちに入りません。
私が申し上げているのはそういうことです。