なにかこの間の出来事は、六本木ヒルズの楼閣がきしみ始めた光景を目の当たりに見ているような気がします。楽天は今日も株価が下がっているようで歯止めが効きません。刻一刻と真綿で首を絞めるような状況となってきました。情報戦でしかないかもしれませんが、TBS側が安定株主を確保したと報道されており、さあ三木谷さんはどんな逆転マジックを見せてくれるのでしょうか。
確かに、三木谷さんがおっしゃるように、放送と通信の融合は始まってきており、どんどん新しいビジネス・チャンスが広がってくることは否定できないし、実際多くのIT企業がそこにむけて動き始めています。だから、楽天でないとビジネスチャンスを切り開けないかというとそうではありません。誰がその新時代の盟主になるのかは未知数です。経営統合は、そんな新時代の中で、きっとTBSにとってよりは、楽天にとってのメリットのほうが遙かに大きいのだと思えます。問題はシンプルであり、TBSやマーケット、またさまざまなステークホルダーの人たちがそのような時代を切り開く役割を三木谷さんに託すかどうかです。

さて、もう一方の「時価総額」経営で成長してきた雄であるライブドアが、セシールを買収しました。このブログで取り上げるのは 堀江さん「下着」を買いはじめた に続いて二度目です。セシールはかつては2000億円を超える売り上げがありましたが、今や630億円程度にまで落ち込んでいます。きっとそれだけ業績が下がり続けてきたということは、帳簿上は隠れている不良在庫も相当抱えていると見るのが普通でしょうし、組織も相当痛んでいるというか、病んで質が落ちていると考えられます。
セシールがネット通販に出遅れたから駄目になったとしているようですが、かつてセシールを利用した経験のある女性の意見をまわりで聞いたところ、いずれの人も商品に魅力がなくなったから利用しなくなったということでした。魅力があり、競争力のある商品を開発していくというのは決して簡単なことではありません。それだけの知恵や人材、またしくみはどうするのでしょうか。おそらく席はあっても実質的には福助を離れ、イトーヨーカ堂に移った藤巻さんでもスカウトするのでしょうか。
ライブドアは、これまでいわばITの箱物ビジネス、売り上げが上がってもさほど投資が必要ないという「収穫逓増のビジネス」をやってきて、さらに買収によって、ライブドア証券など金融で手数料ビジネス、利ざや稼ぎのビジネスを広げてきたものの、モノのビジネス、開発リスク、在庫リスクを抱えるビジネスの経験はありません。まったく違う文化の世界です。ライブドアデパートも、モノは扱っているとはいえ、しくみによる手数料ビジネスでしかありません。つまりライブドアは、モノを扱うビジネスの怖さを経験していない会社で、そこには、業態を超えたとんでもない激しい競争が待ちかまえています。
セシールの顧客1500万人の名簿を200億円で買ったと割り切ったとしてもどうでしょうね。その顧客リストも生きたものかどうかもわからないですが。まあこれも堀江さんのマジックを期待しましょう。

さて、こういった顧客獲得の買収をどう評価するかに答えてくれるのが「顧客投資マネジメント」です。また、顧客獲得のためのプロモーションなど、これまでマーケティングの領域とされ経費とされてきた費用を、顧客への投資として財務的に評価すればどうなるのかという発想の本です。顧客価値を見えるようにして、ファイナンスとマーケティングの融合させるという試みであり一読をオススメします。
人気blogランキングへ


顧客投資マネジメント 顧客価値の可視化によるファイナンスとマーケティングの融合