CNETで『ひょうたんからコマ--表面に書き込み可能な防水コーティング技術登場』という記事がありました。もともとは『紫外線のもとではやく乾く』コーティング剤のデモをするために塗布したものの下に敷いていた紙に鉛筆やボールペンで書き込みができるかどうかを調べてみたことから『目から鱗』のようにこれはいけると気がついたようです。まだ技術が完成していないようですが、防水ラベルなど応用範囲は結構あるかもしれません。
『ひょうたんからコマ』という話では、ポストイットの開発が有名です。もともとは、3Mのスペンサー・シルバーが『よくついて、離れない』接着剤の開発をやっていて『よくつくが、はがれやすい』接着剤がたまたまできてしまいました。
そのままでは、たんなる出来損ないの接着剤にしかすぎず、陽の目を見ずにお蔵入りとなっていたでしょうが、たまたま同僚のアート・フライが、賛美歌のしおりがすぐに落ちてしまうので、なんとかならないかと思ったときに、この接着剤のことを思い出したことがきっかけとなって開発が進んだのです。
しかし、『賛美歌のしおり』というコンセプトでは売れません。アート・フライはなかなか商品化のアイデアに巡り会えず、とにかく使ってもらおうと試作品をさまざまなひとに配りました。たまたま秘書の人たちが『メモを貼り付ける』のに利用しているのをアート・フライが見て、現在のポストイットのコンセプトに気が付き大成功したというのは有名な話です。まさに『目から鱗』の気づきに出会えたのです。
どんなよい技術でも、それがどうすれば社会に役立ち、商品として売れるのかに気づかないことが結構あります。実際の商品として成りたつ用途やコンセプトを発見できないということです。クイズと一緒で答えを知ってしまえばなあんだということでしょうが、答えを見つけるのが結構難しいということでしょう。ポストイットの開発物語りは、きっと役立つ技術だという思いこみがあって、それをしつこく追求していたから「目から鱗」の発見ができたという教訓でしょうか。
発明があったからすぐに用途が見つかるとは限りません。実際、人工血管とか、フィルターとか眼鏡のレンズ拭きなど、とてつもなく用途が広がっている超極細繊維も、最初の研究段階ではまったく用途がわからず、研究中止の会社決定があったそうです。それをかいくぐって生まれた技術でした。誰も、発明したご本人もまさか、今日のようにどんどん新しいマーケットを広げる技術だとは気がつかなかったというから、人の想像力には限界があるということでしょうね。
『ひょうたんからコマ』という偶然との出会いも『目から鱗』という気づきも商品が成功するための不可欠なものなのかもしれません。
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