ビジネスの中で気をつけないことがあります。人は、ついつい、本質的な課題の解決を考えずに、目先の解決を正しく処理しようという癖があることです。やがて、理想をいったって始まらんよということで本質を考えることはタブーになっていきます。
逆に、本質的な課題解決をめざしていても、計画に目新しさや巧みさが欠けていると、戦略そのものも間違っており、実行できないと考える癖もあるということです。そんな拙いやりかたではできないといいたくなるのです。

プロ野球の合併問題、年金問題についても、そう考えると、巨人のオーナーやパリーグの経営者の人たちの行動や、年金問題の厚生労働省の官僚の人たちのやっていることが見えてきます。

プロ野球の場合は、巨人の利益を守り、あわよくばシェアをさらに拡大したいという巨人のオーナーと、球団の赤字を縮小したいという経営者の思惑が一致し、大人の判断で、正しく手続きをして処理しようとしていますね。
その先の野球やスポーツの将来が考えられない。ファンや選手、また一般の人たちには、そんな思惑がないから、間違ったことをやろうとしていることがすぐに感じることができるのですが、ご当人たちにすれば、何を理想を言っているのだ、たかが素人がということになります。

たかが素人、されど素人で、会社に入って年数の短い人たちのほうが、ベテランの人たちよりも、会社の問題について正しく、本質的な課題をわかっていることが多いことがしばしばです。長年その業界にいる玄人よりも、外からはいってきた素人のほうが本質的な課題が見えるものです。

年金問題も、現状の制度を維持し、負担と給付のバランスをととる、しかもマクロ経済スライド方式で調整するので、どうなっても制度は破綻しないという正しい「計画」と「実行」を官僚が描きました。年金のしくみは、きっと破綻しないように描かれていると思います。破綻するのは、年金生活者と、負担する若い人たちでしょう。この問題も、多くの人たちがおかしいと感じました。本質が議論されていないのです。

逆に、本質的な課題解決をめざしていても、計画に目新しさや巧みさが欠けていると、戦略そのものも間違っており、実行できないと考えがちというのは、ライブドアの近鉄バファローズの買収計画に対する意見や評価を見ていても感じます。

売名行為だとか、拙いとか、ありふれたことばかりが書かれていると批判する人たちがいます。いろいろ議論することは、さらに新しい知恵を生むのでいいことかもしれませんが、これだけは理解しておかないといけません。

成功した戦略のすべてが、あっと驚く妙手、また緻密な計画で実行されてきたわけではありません。むしろ逆です。ビジネスの世界で成功した多くが物語っているのは、実に当たり前のことを、当たり前のこととして、泥臭く、徹底して積み重ねられ実行されてきた結果というものが多いということです。

重要なのは、課題をどのように考え、何を目指しているかです。またどのような夢やビジョンがあるのかということです。また素晴らしい計画ではなく、実行できる計画をもっているかどうかです。

経営は生き物です。拙い計画も、やがて実行していくうちに修正され、磨かれていきます。それこそ、計画して、実行して、学んで、進化させていくものだということです。その積み重ねを実行出来ることを経営力があるといいます。
ミンツバーグという経営学者は、経営を粘土でつくる彫刻に例えました。作家にも経営者にも、明確な計画があるわけではなく、達成したいイメージがある。実現したいイメージに向かって、手の感触で土を確かめながら、整え、またやり直し、それを繰り返しながら形をつくっていく。経営はそういうものだというのです。

それに誰かが手を挙げげなければ、なにも実行されません。実際に経営して、うまくいくかどうかなど誰にもわかりません。神のみぞ知るです。それが市場というものです。
だから、「やりたいといっているのだから、やらしてあげればいいじゃないか」という、いかにも経営の素人という感じの人の意見に本質があるように思います。

リスクをかけて最初に手を挙げるチャレンジは正当に評価したいものです。




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