このところ、プロ野球は、近鉄バファローズとオリックスの合併問題や１リーグ制への動きをめぐって揺れ動いています。今、ホットな話題である、このプロ野球騒動を題材にして、マーケティングの考え方をご紹介していきたいと思います。
まず、多くの人たちが憤りに感じているのは、一部のオーナーの人たちの発言や考え方が、ファンを忘れている、ファンを無視していると感じているからだと思います。プロ野球にとって、球場に来てくれ、ＴＶで応援してくれるファンは、マーケティングでいう『顧客』です。
そこでお二人に登場していただきましょう。まずはドラッカー大先生です。ドラッカーは、企業（プロ野球）の目的は、「顧客（ファン）を創造することだ」ということを３０年も前に言っています。もうお一人はコトラー大先生です。「新しいボスは、顧客（ファン）である」「企業（オーナー）はそのことに気がつく必要がある」「顧客（ファン）を考えていないとしたら、なにも考えていないのと同じなのだ」とおっしゃっています。
顧客（ファン）から発想する。「顧客のニーズを感じ取り、それに応える」（コトラー）のが、マーケティングの基本です。もっと具体的に言えば、ものごとを決めるときに、顧客（ファン）の顔を思い浮かべ、どうすれば、顧客（ファン）に喜んでいただけ、また新しい顧客（ファン）がついてくれるのかを、まっさきに考えるのがマーケティング・マインドです。日本のプロ野球のオーナーの人たちも、もう一度、マーケティングの基本を思い起こして欲しいものです。

ちなみに、近鉄という会社に注目してみます。新「近鉄グループ経営改善計画」というものがあります。見てみますと、基本的には、１７００名の社員の削減や、鉄道投資の削減、グループ会社の売却、整理・統合というリストラを目指した計画です。さすがに後ろ向きな経営と批判されるのが嫌なのか、新規事業の展開が付け加えられていますが、具体的にはなにも書かれていません。山口社長の「署名したらプロテクトしない」という発言をあわせて考えると、リストラ推進のためのトップという匂いがしてきますね。
さらに、「お客さま第一主義」を徹底するとともに、「近鉄ブランドの確立」を目指す、また「お客さまの満足度向上」につとめると書いてありますが、今回の合併劇が「ファン（顧客）第一主義」だったのか、かなり首を傾げます。まずは「塊より始めよ」であり、なにがファンのためなのかを、もう一度山口社長は考え直さないと、発表されている内容との矛盾を感じずにはおれません。トップはどんな厳しい状況でも言行不一致ではいけないのです。

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