社会保険庁の「グリンピアの破綻」、「組織的な空残業」、「豪華な研修施設」、「家賃の安すぎる職員住宅」、「恒常化している裏金つくり」などの実態が明らかになってきています。誰もが予想した通りだと感じているでしょうが、やはり憤りを感じざるを得ません。
「乾いたぞうきんを、さらに絞る」コストダウンの努力、また工場で働く人びとも含めて全社をあげて知恵を生み出す努力など、地道な企業努力を積み重ね、モノづくりで世界をリードしてきた日本という国と、無駄な予算を垂れ流し、権益にしがみつき、不正を際限なく繰り返しながら、さらに膨大な財政赤字をふくらませてきた日本という国のギャップはすさまじいものを感じます。日本には、国境線がない二つの国が存在しているのではないかとすら思えます。

昨日、新幹線で読んだ『週刊ポスト』で、『社会保険庁が、天下り「年金管理システム」に1兆2000億円』という、さらに驚く記事がありました。いかに酷いかは、記事を読んでいただきたいのですが、パソコンのレンタル費用として、年間に1台36万円も支払っているといった常識はずれのカネのバラ撒きです。木村剛さんのブログで「IT技術はお役所以上にお役所的」という記事がありましたが、まさに「お役所」と「お役所的なIT企業」のカップリングが生んだとんでもない話です。

さて、坂口大臣は、社会保険庁に民間経営者をいれて改革するということですが、奥田経団連会長も「1人では効果なし」という疑問をなげかていらっしゃいます。では、さらに、問題は社会保険庁だけでなく、その上の厚生労働省も同罪だと国民は感じています。今回の年金問題で予算を通すために、データの発表を遅らせたばかりか、木村剛さんが求めた情報の公開に対して帰ってきた資料の写真を見ると呆れはてます。
役所や官僚制度の改革なくして、日本が健全な社会を維持していくことはもちろん、日本の存続も危ういとすら思えます。改革に待ったなしなのですが、どうも、民間人を登用したり、民営化で改革できるという安易な発想には疑問です。

その点を、PFドラッカーが、もはや古典ともいえる『抄訳マネジメント』のなかの「公共機関不振の原因」という章で取り上げています。公共機関の不振の原因は、「経営管理の方法、人材の不足、目標と成果の具体的欠如にあるのではなく」、「予算による支払い、予算による業績評価、予算による地位評価、不要事業廃止の困難さ」にあるという指摘です。まさに日本の「今」を分析しているかのようです。
予算の獲得が最大の目的であり、確保した予算を、どう賢く使うかではなく、ただひたすら使うことが目的になっているというのは、日本のお役所や官僚だけの問題ではないということです。さらに、ドラッカーは、政府関係機関が成功するためには、「目標と活動を監査する」、「時限存立をはかる」という二つの解決を示しています。つまり、民間人を登用するなら、「目標と活動を監査するしくみ」がないと「笛ふけど踊らず」、「都合の悪いことはトップに知らせない」状態になることは誰もが想像できることです。組織の「存続期間」を定めることは政治の責任ですが、それがないから、日本は、どんどん天下り先が増殖しつづけてきました。

以前読んだ本に、実は、1980年代に目に見えない「第三次世界大戦」が繰り広げられていたということが書かれていました。経済戦争のことで、日本とドイツが戦勝国で、アメリカは敗戦に匹敵する膨大な貿易赤字を抱えることになり、さらに社会主義国は国家すら崩壊したという視点でした。同じように考えると、日本は二つの国の見えざる内戦によって、すでに敗戦に匹敵する財政の赤字をかかえ、傾きつつある国かもしれません。

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抄訳マネジメント―課題・責任・実践