マスコミや経済評論家の人たちの多くは、今日のデフレ傾向を、中国や東南アジア諸国の安い製品との競争が原因だという論調が目立っています。その要因も否定はしません。しかし、私がマーケティングで関わっているデジタルカメラの分野とか、ドラッグストアで売られる一般医薬品(OTC)の分野では、そういった海外製品との競争はほとんどありません。デジタルカメラは特に、世界のマーケットでも、ほとんど日本企業の独占状態であり、中国生産も、日本ブランドの製造でしかありません。一般医薬品も規制の厳しい分野で、競争しているのは国内メーカー同士です。現実派、どちらの分野でも、よほどの策を講じないと、価格はどんどん落ちていきます。なぜでしょうか?
デジタルカメラの場合、ひとつには、技術の進化の速度が激しく、また激しい開発競争の結果、製品のライフサイクルが極端に短くなってしまってきているということです。デジタルカメラの心臓部のひとるであるCCDは、画像を電子信号に置き換える半導体ですが、この世界は、「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」というムーアの法則の世界であり、集積密度がアップした結果として画素数がどんどん上っていきます。
それにしたがって新製品が登場してきますから、パソコンの分野に近いものがあります。DELLの会長が、パソコンは生鮮食品であり、在庫品は鮮度がなく、価格が急落するといったのと同じ状況です。
マーケティングも、この技術の進展速度を計算に入れないと成り立たなくなってきました。
さて、一般医薬品のほうですが、デジタルカメラとも共通するのですが、メーカー間の競争だけでなく、販売店同士のすさまじい競争が繰り広げられているということです。
今日、小さな専門店の数は年々縮小しており、逆に全国チェーンの流通企業のシェアがどんどん上ってきています。この大手チェーン同士の競争が価格を押し下げる原因になっています。
売れる商品、売れるブランドは、目玉としてできるだけ安くして集客したいという販売サイドの意向が働いてきます。集客の競争として、利益を無視した価格が決められていくということです。
価格が、店と店で格差差が広がってくると、いつでも、どこでも安心して買えるというブランドの信頼性が次第になくなり、商品の寿命を縮める結果になります。
このような点にも、マーケティングが関わらないと対処できません。
古典的な価格政策だけでは、対処できない時代になってきたというのが否定できない現実です。