大阪の西天満というところに、「てんまみち阿田」という店があります。美味しいおでんと日本酒が楽しめる店です。息子さん達が東北の酒蔵に修行にいってらっしゃるそうですから、日本酒へのこだわりはそうとうなものです。桂枝雀師匠が生きていらっしゃったときに、よく通われ、いつも決まった席で、ひとり静かに、呑んででいらっしゃったそうです。
その店に行って、呑みながら、店の方と話をしていた時のことです。
「このまえ、車でぶらっと焼津に寄った時に、面白い名前の酒蔵がありましたよ。『磯自慢』という看板があってね。海苔の佃煮みたいで、あまり美味しそうに感じないし、なんでそんな名前をつけたんでしょうね」と話のはずみで聞いてみたのです。
即座に答えが返ってきました。
「大西さん。それは古くからある有名な酒蔵で、佃煮の名前のほうが後ですよ。呑んでみますか。」
当然、いただいたのですが、綺麗な味の吟醸酒で美味しいお酒でした。大恥をかきましたが、こんな楽しい恥は大歓迎です。おかげさまで、『磯自慢』の名前も味もしっかり覚えました。
日本酒は、今や焼酎に押され気味ですが、繊細な素材の味を活かした日本料理には、やはり「日本酒」があうと思います。関西は、灘、伏見など、比較的大きな酒蔵元が揃っています。よく、こういった大きな蔵元の悪口を言う人がいますが、実際には、どの蔵元にも名人とも言うべき杜氏さんがおられ、美味しい酒をつくっていらっしゃいます。品質も安定しており、安心して飲めます。また、震災で壊れた古い酒蔵も資料館として再建し、伝統文化の保存にも積極的に取り組んでおられ、まさに「文化企業」という側面ももっています。ぜひ一度、訪れてみてください。
そういえば、灘の有名銘柄に「沢の鶴」があります。新幹線に乗っていると、品川の手前で「沢の鶴」の大きな看板が見えます。沢の鶴のマークは、今は亡くなりましたが、イタリア人のデザイナー、マルチェロ・ミナーレさんの作品で、私がプロデュースしたものです。
ミナーレさんのスタジオは、「ゴードン」「ジョニーウォーカー」などのラベル・デザインでも有名でした。そのミナーレさんが、日本に来られたときに、冷えた吟醸酒を呑んで絶賛していたのをいまでも覚えています。
お酒が好きなせいか蔵元とは縁があり、灘五郷の銘柄では、小さな酒造元のホームページを、仲間のデザイナーとつくったことがあります。いぜん、NHKの朝の連続ドラマ「あまからしゃん」の舞台になった「木村酒造」さんです。ここの「瀧の鯉」も美味しいお酒です。
日本酒も、焼酎も、ほんとうにさまざまな顔があります。フランスやイタリアなどのワインと同じだと思います。日本が誇ることができる文化だと思います。地元の蔵元を見つけて、見学したり、試飲するのも旅の楽しみのひとつですね。

↓おひとり、おひとつのクリックが私の元気の素になっています。
 人気blogランキング
ありがとうございます。(^_^.)