日本の企業は儲けることが苦手なようです。つい最近の勉強会で早稲田大学大学院の寺本教授をお招きしてお話を伺いましたが、日本の企業の総資産あたりの利益率の話題がありました。日本は90年代以降低調で、2%前後しかありません。アメリカは6%、ドイツは14%超です。
なぜ問題なのかというと、総資産利益率(ROA)が2%というのは、会社を売りとばして、米国債を買った方が儲かる水準だと言うことです。寺本教授が、「日本の企業は、NPOみたいなもので、みんなボランティアで働いている」とジョークをおっしゃっていましたが笑い話ではすませないことです。
ものづくりに強い日本ですが、日本の国際的な競争力の比較では、技術力はアメリカに次いで2位、しかし経営力では40位程度の評価しかありません。技術は一流、経営は三流という厳しい評価です。
なぜそうなってきてしまったのでしょうか。ひとつには、多くの企業では、いまだに売り上げ増を重視するという考え方から抜け出していないと感じることが多いですね。経営者の方がそうは思っていなくとも、現場はひたすら売り上げを伸ばすことを考え動いているように感じます。
伸びていない市場で、無理に売り上げを伸ばそうとすると、どうしても価格を下げないと売れません。当然、激しい価格競争が始まります。本当は、「どうやって売り上げを伸ばすか」から「どうやって儲けるのか」に課題が移ってきているはずなのですが、なかなか頭が切り替わりません。
ご依頼を受けて、営業部門で勉強会をすると、まずその点に気付いてもらうことからはじめます。売上高を伸ばすことしか目を向けないのは、管理職のかたがたの多くが、高度成長期に育ったので体に染みついてしまった人が多いからかもしれません。

さてこの総資産利益率(ROA)という見方は、儲けるしくみを考えるいい切り口だと思えます。総資産利益率は、売上高利益率(利益/売上高)×総資産回転率(売上高/総資本)で計算しますが、売上高利益率をあげるという視点と、総資産回転率を上げるという視点が生まれてくるということです。
売上高利益率を上げるために、原価を下げるか、より高付加価値の商品やサービスを売ること、あるいはその両方を追求するということになります。総資産回転率を上げるには、余計な資産は売却して持たないか、ビジネスの速度を上げること、またその両方を追求することになります。
マーケティングの仕事では、より付加価値の高い商品やサービス、またそれが売れるしくみを考えるという役割に焦点が来ますね。またビジネスの速度を上げると言うことでは、開発の速度、物流の速度が重要ですが、案外見落とされているのが営業の速度です。
寺本教授もご指摘でしたが、日本の営業には精神論が残りすぎており、営業のしくみや営業の効率を考えるということが遅れているようです。お話の中にもありましたが、営業を「営業は断られてから始まる」といった個人技でとらえる人が多いのです。それでは営業の速度や効率を上げることにはつながりません。
なかなか文化は変わらないものだということは、何度か書いてきましたが、もうそろそろ営業の文化も変えていかないと、日本の会社はNPOみたいなもので、儲ける仕事をしていないというそしりから抜け出すことができないように思います。
よく、企業は「儲けること」ばかりに走っていると非難をする人がいますが、間違いです。実際には、「売り上げアップ」には走っても、「儲けること」には走っていないのが現状です。
「儲けることが美しい」ぐらいの価値観だってあっていいのではないでしょうか。でないと会社も日本も元気がでてきません。

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