唐突な話かもしれませんが、江戸時代に一代で海運業で大成功した高田屋嘉兵衛が若い頃にお世話になったという廻船問屋は、和田岬に立ち寄る船頭さんたちに無償で食事を振る舞い宿を提供したといいます。人が集まると情報も集まってくるからです。情報が洪水のように飛び交う今日でも、本当に役立つ情報をもたらしてくれるのは人であることには変わりありません。
人のネットワークということでは、最近「人脈」という言葉が多く見られるようになってきました。確かに「人脈」といえる深い信頼関係で結ばれたネットワークがあればビジネスのチャンスは広がってきます。これは洋の東西を問わずいえることです。アメリカのベンチャー・キャピタルは、成功しそうなベンチャー企業の経営者に、自らの持つ人脈を提供して飛躍のチャンスを一気に広げます。
しかし「人脈」といえるほどの深い関係がそう簡単につくれるわけがありません。むしろ、成功した結果として「人脈」は広がっていくというのが現実です。人脈というよりは、まずは企業という枠組みを超えた人と人のネットワークを広げ、活用することを考えたいものです。それが「人脈」といえるものになるかどうかは楽しみとしてとっておくぐらいのゆとりが欲しいですね。


井の中の蛙にならないために
最近は異業種交流会とか、インターネットのオフ会など、仕事も立場も違う人たちが交流する機会が増えてきました。いい傾向だと思います。会社の立場を超えた研究活動なども広がってきています。
人間関係が会社の中だけだと、どうしても情報や知識が偏ったり、視野が狭くなってしまいがちです。またその会社でしか通用しない「常識」に冒されます。いくら会社の内部情報にいくら精通しても、それは井の中の蛙の知識でしかありませんからね。むしろ、全く違う業界や全く違う仕事をしている人たちの知識や情報に触れることで、発想のヒントは広がってきます。それに考え方もバランスがとれてきますね。
そういえば、ヨロンさんの「ビジネスピープル共和国」の少し前のエントリーに「『この業界は・・・』が思考を麻痺させる」がありました。自ら転職経験を重ね、異業種交流会を主宰されているだけに説得力があります。

自らの魅力を広げるために
人の輪を広げるということは、自らのマーケティングをするということです。ネットワークの広がりや深さは、自分自身の魅力のバロメータといっても良いと思います。分かりやすいですね。人のネットワークは自分自身に、なんらかの強みや魅力がないと広がりません。商品やサービスと同じ事です。
人の輪を広げようとすることは、自分自身の魅力を広げ、自分自身が変わっていこうとするエネルギーになっていきます。順序を間違えないでくださいね。魅力のある人とつながろうとすれば、なにかお役に立てることはないだろうか、お役に立てるなにかを持とうと考え、努力することが最初です。
有能なビジネスマンは、自らのマーケティングをしっかりやっています。だからお客さまや得意先からも厚く信頼され、たんに取引関係とは割り切れないような深い人間関係を築いています。相手の方になんらかのお役立ちをしているからです。まずはGIVE(ギブ)、つぎにGIVE(ギブ)、そしてGIVE(ギブ)でないと、立場を超えた人間関係はつくれません。
ときどき、役職や立場でつながっているだけの関係を自分の「人脈」だと勘違いしている人がいらっしゃいますが、役職や立場が変わっても引き継げないと、ほんとうの「人脈」とも、個人としての人間関係があったともいえないですね。

なにかを共有するということ
青年会議所(JC)のOBの人たちが主なメンバーとなっている早朝の勉強会に参加させていただいているのですが、共通しておっしゃることは、若い頃から、一緒に会議所の運営や、奉仕活動、また勉強会をやって、また飲み明かした間柄だから、なんでも相談できる、人としてもビジネスでも信頼できるということです。「青春を共有している」とおっしゃっていました。羨ましい限りです。青年会議所を卒業した現在でも、皆さまが人のネットワークを非常に大切にされています。こんな問題は誰に相談したらいいのかという会話がしょっちゅう聞こえてきます。
いいヒントだと思います。なにかの体験、なにかの活動を共有すると人間関係は深まります。ビジネスでも戦友ともいうべき、ともに苦労を共有した人たちとの交流は絶えません。
勉強会でも、なにかのコラボレーションでも、ともに何かをしたという体験が活用できる人の輪を生み出す近道だと思います。後は、「友達の友達はみんな友達」という広がりも生まれてきますね。

人の輪を広げることは、それですぐにもビジネス・チャンスが生まれてくるとは限りません。しかし、確実に自分自身を成長させてくれます。しかも、いつの間にか、話を聞いたり、相談したりしているうちに、会社や業界の中だけでは得られない情報や知識、またものの見方を持てるようにもなってきます。それに、人の輪の広がりや深さは、その人の信用度のバロメータともなってきますね。

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