ゲド戦記

『時をかける少女』から学べること

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土曜日に大阪のテアトル梅田に『時をかける少女』を見ようと出かけたのですが、上映回数が減っており朝と夜に2回しかやっていませんでした。整理券を発行してくれるということなので、日曜日の朝の整理券をお願いすると当日でなければ駄目だというのです。
混んでいますかと聞くと、「上映回数が減ったので、満席が続いています。お早めに整理券をお求めにならないと立見席になるかもしれません」という返事でした。
ネットでの評価がきわめて高く、口コミで広がり、上映館が増えてきているという状況を考えると首を傾げますね。こんな映画館はパスということで、翌日の日曜日に京都シネマに行きましたが、小さな映画館だということもあり立ち見の人もいらっしゃいました。朝も立ち見がでたようでした。行ってみてわかったのですが、その前日の土曜日に「京都シネマは
「細田守監督、イメージガール高原愛さん 舞台挨拶大盛況!」だったそうで、それなら最初から京都に行けばよかったとちょっぴり悔しい思いも。
確かにいい映画でした。映画内容は書いていらっしゃる方が多いのでそちらに譲りますが、『時をかける少女は』は、マーケティングのケーススタディとして、きっと新しい歴史を加速する出来事だになるという確信が深まってきました。
その点を渡辺聡さんが、
愛される「時をかける少女」:口コミマーケティングに開かれた新しい道 でまとめていらっしゃるのでお読みになることをお勧めします。
口コミマーケティングというと、ともすればプロモーションのしかけという側面に目が行きがちですが、「核にあるのはプロモーション技法やツールは何を使ってといった話ではなく、良い作品と良い物語ということになる」という渡辺さんの視点はさすがだと思います。
 
顔が見える”BUZZ”マーケティング、さらに まじめにやらないと「炎上」する で問題提起させていただきましたが、ネット時代になればなるほど情報操作は難しくなってきます。ネットでハブの役割をもっている人たも含めて、そうやすやすと情報操作に乗るとは到底思えません。
口コミを広げるといって、局地的にはしかけることができたとしても、それでは広がりの程度はしれています。情報を発信するのは、書き手の自由にゆだねられているという壁があるからです。だからいろいろを情報提供を行い、しかも人びとに誠意が伝わり、共感をえられれば広がっていくいうことでしょう。つまり個々の人たちのハートに響かないと駄目だということです。

もっと肝心なことですが、渡辺さんの
「良い作品と良い物語が核」というのは見た人の評価や満足度が決定的な鍵を握っているということです。創り手ではなく、見る人にとって「良い作品と良い物語」であることが前提だということです。これは使ったり体験することによって、さらに「共感や感動、満足」がさらに深まる「商品やサービス」、あるいは「メッセージ」と置き換えてもいいのではないでしょうか。

『時をかける少女』は、公開日決定の段階では劇場数は17館でした。それが40館を超えるところま増えたとはいえ、『ゲド戦記』の興行成績とは比較にならなりません。テレビコマーシャルもつかったマス・キャンペーンを展開している『ゲド戦記』と比べると、プロモーションもないに等しい『時をかける少女』。だからコストのかからないブログを活用した対照的なマーケティングとなったのでしょう。
圧倒的なマーケティング投資を行って大きなヒットと確実な投資回収を狙うマーケティングもあれば、投資体力がなくとも、地下水脈のように広がっていく口コミによって、たとえ小くとも成功が得られるマーケティングもありえるのだということを、『ゲド戦記』と『時をかける少女』は見せてくれています。時代の流れを物語っているような象徴的な出来事が起こっていることだけは間違いありません。

それにしても、上映しているのが、東京都は5館、愛知県は3館、埼玉、茨城県、三重県、京都府が各2館というなかで、大阪府はたった1館というのは、現在の大阪を物語っているようで寂しい限りです。

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いい映画だから興行が成功するとは限らない

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『ゲド戦記』がネットでは、お寒い評価というか失敗作という印象を受けます。しかし興行的には滑り出しは絶好調です。それとは好対照に『時をかける少女』はネットではすこぶり評価が高いにもかかわらず、興行的には『ゲド戦記』の足元にははるかに及びません。
こんな商品と思っても最初はどんどん売れることはあるし、逆にいい商品だから売れるとは限らず消えていった商品もたくさんあります。
このブログでは、『ゲド戦記』について書かれた記事のなかでのアンケート結果の紹介に仕方が、人を欺く典型的なパターンのひとつであることをご紹介しましたが、異なる視点でいくつかのブログが取り上げており、それぞれが面白いので、そえについて書いておきたいと思います。

話題を消費する
まずは切り込み隊長の 『ゲド戦記』が不評のようなのに商売人根性が炸裂し興行成績は優秀な件についての考察 は隊長らしい切り口で、内容のよさ、また評判で限られた人たちに広がっていくのとは違う世界、楽しめる作品かどうかよりも、話題をつくりだすことが興行の成果の鍵となる「瞬間風速型大作志向」が増えてきているという視点です。
コンテンツの世界も、ビジネスの世界であり、投資した資金をできるだけ短期的に回収したいわけで。話題性をつくり、マスコミを巻き込み、さらに大量のプロモーションの展開でスタートダッシュするというのはアメリカの映画産業も同じ傾向だし、まさに映画というコンテンツの世界だけでなく、小泉流の選挙戦も、また7人のキャラクターを使った資生堂の『TUBAKI』のプロモーションにも通じます。

煽りの元祖といえばゲッペルツ
話はそれますが、こういった煽り、宣伝といえば元祖はナチスドイツ。ヒットラーのブレインであったゲッペルツを思い出します。シンボルとしての鍵十字、ポスター、そして親衛隊の制服と音楽。ラジオと新聞。まさに劇場型のプロモーションを大成功させたのがナチスドイツのゲッペルツです。青年たちはナチスの思想というよりは、制服のかっこよさに憧れどんどん入隊していきました。こういったプロパガンダの手法は、理屈の世界ではありません。情緒であり感性であり感情に訴え、人々の関心をひきつけるのです。
この原理は今でも変わりありません。小泉流の選挙がまさにその有効性を証明してくれました。
『松浦晋也のL/D』さんが 映画のマーケティングを考える で書かれているように、この「ゲッペルツ以来の手法に加えて、『メディアに出資させて利害関係を作り、一見宣伝とは思えないフレームワークに宣伝的情報を挟み込む』という手法が、派手に使われている」というわけです。


BUZZマーケティングの効果がわかる?
ブログ『デジモノに埋もれる日』さんは、 「亀田」と「時かけ」 - メディアの扇動力がネットに圧される時代 で、これまでは個人個人の評価が分断されていたために、そうしたメディアによる扇動が効いたけれど、ネットで個人個人が文字として表明し、横断的に連鎖していくために、こういったのメディアの扇動力は次第に力を失っていくという見方をされています。そうなればいいと思いますが、ネットの力で実際にどれだけマスとしての人々をを動かせるでしょうか。ネットも影響力を持ちつつあるとはいえ、メディアの煽動力が圧される時代という状況にはまだないのではないでしょうか。
ブログ『人工事実』さんは、 市場規模が大きく違う作品のネットでの評判を同列で見るのはいろいろ見誤るんじゃない? という疑問を投げかけていらっしゃいます。確かにこの二つのアニメ作品に投じた投資額も違うし、上映されているスクリーン数も、作品の質はともかく、ブランド力も、体力体格もちがうのです。
ちょっと気になったのは、「『時をかける少女』はこの作品に興味がある人しか見てないので、ネット上では評判がいいという可能性が高くなってくる」というのはそうかもしれません。ただ、『ゲド戦記』について「見る人が増えれば、悪評も出る可能性が高くなる」というのは一見正しいようで無理な見解です。いずれにしても興行成績をみても、人々はマスコミによるパワーゲームで動いたのです。ネットにそのパワーはまだありません。
あれだけの低い評価がと酷評、また一方では高い評価という違いが、映画というコンテンツの興行にどのように影響力があるのかどうかはまだ未知数なのかもしれません。だからこそ今回の『ゲド戦記』と『時をかける少女』の今後の結果から目が離せません。もし今後の『ゲド戦記』や『時をかける少女』の興行成績の変化いかんで、BUZZマーケティングのパワーみたいなものが見えてくるのではないでしょうか。

映画も「評価が悪いと短命」であって欲しい
むしろリアルな世界、とくに日用品や食品などでは、初期のプロモーションがうまくいって売れたとしても、それを購入した人の満足度が低いと、リピート購入が得られず、あっという間に失速します。
デジタル家電などのように、人の評価を参考にしてブランドを選択するという商品の場合も、ユーザー評価が悪いと購入者が広がらなくなってしまい、やはり失速します。いずれの場合もユーザー人たちの満足度はマーケティングの成否を決めるうえで欠かせない要素です。
映画の世界のビジネスはまったくの素人ですが、そのことはきっと映画の世界にも緩やかに当てはまるのではないかという気がします。スタートダッシュはよかったとしても『ゲド戦記』は観客動員数が尻すぼみになっていくかもしれません。そうでなければネットの評価と興行の成果は関係ないということになります。それはそれで気持ちが悪いですね。
『時をかける少女』は、上映している映画館もすくないので、爆発的な興行成果は無理にしても、あれだけ評価が高いと、ぜひ観てみたいという人も増えてくるはずと素直に考えたいものです。息の長い興行が可能かもしれません。
そうだとすると、資金がなければないで、ネットにアプローチして、人々の評価をとりやっていくマーケティングも可能になってきたということであり、そうなることを願いたいものです。

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アンケート結果で人を欺く方法

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『ゲド戦記』を見てきた人から、「絶対見に行かないほうがいい、あれは最悪で映画になっていない」と愚痴をこぼされてしまいました。しかし興行成績は抜群のようで、2日間で約68万人を動員、興行収入が約9億円を記録だそうです。
Yahooムービーの作品ユーザーレビューでは、5点満点中2.3点と最悪。アニメでは『時をかける少女』が4.6点で好対照といえそうです。投稿されたコメントも酷評が目立ちます。
それはいいのですが、問題はこの 『ゲド戦記』ユーザー満足度調査〜手嶌葵に高評価! という記事です。
「ストーリーはとてもおもしろかったし、絵もキレイだった。テーマソングも耳に心地よい歌声でとてもよかった」(大阪府/20代社会人/女性)、「私たちの生活の中でも考えさせられる事だったので、見応えがありました」(大阪府/30代/女性)など、「総合」の満足度は63.5P(ポイント)だった。
>さらりとコメントをつけて書いてあり、100点満点中の63.5点がいかにも好評価で満足度が高かったような書き方になっています。実際、こういった方法によるミスリードは気をつかないといけません。
満足度という場合、アンケートの質問のしかたによっては、スコアは変わってくるので、他の評価と比較をしないと、評価がよいのかわるいのかは判断できないというのが常識です。
この満足度調査を行った【オリコン・モニターリサーチ】で他の映画の満足度結果をの総合評価ポイントを見ると、
『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』・・・79.3
『DEATH NOTE デスノート 前編』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75.2
『ダ・ヴィンチ・コード』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69.5
『ゲド戦記』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63.5
こうみると、やはり他の作品よりは評価が低く、この記事を書いた人が、わかっていて意図的に書いたのか、わかっていないのかは知りませんが、アンケート結果で人を欺く典型的なパターンといえそうです。

映画界も、満足度を重視しないと、まさに一時的に消費するだけのコンテンツだけが氾濫するだけの不毛なビジネスとなりかねませんね。

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