会社はいったい誰のために経営すべきかという問いかけには、簡単な答えはありません。出資している株主さんだ、社員や取引先といった会社を支えてくれる人たちだ、いやお客さまだと、さまざまな視点があります。
しかし、経営が良いのか問題があるのかを評価しようとすると、誰のために、どんな成果をだせたかをチェックする基準や仕組みが必要になってきます。それは「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」の問題といわれています。それがしっかりしていないと、経営の目標も、責任も曖昧になり、経営が私物化されたり迷走してしまいかねません。
プロ野球の、このガバナンスの仕組みは非常にいびつです。経営をチェックし評価する基準も仕組みもないといったほうが正確でしょうね。親会社が出せる金の範囲で「優勝」さえしてくれればいいというタニマチ感覚の経営でしかありません。今、起こってきているプロ野球問題の本質はこんなところにあるのではないでしょうか。
この間の不思議な現象は、選手会側がプロ野球の将来を憂いさまざまな提案をしています。ストの最中もファン離れを防ぎたいという想いでサイン会やファンとの交流会を自主的に開催しました。それにくらべて球団、またオーナーサイドは全くの受け身です。予想を遙かに超えた波紋が広がり、あわてて対処を考え始めただけです。しかも出てくる言葉は「慎重に」でしかありません。
危機感も、プロ野球を立て直したいという情熱もファンに対する愛情も感じられません。当事者意識も希薄さを感じます。どのようなビジョンを持って、どのように行動するかということも示せません。問題を沈静化するための当面の対処を表明しているだけです。あげくのはてが、読売新聞の社説でしつこく選手側が悪いんだという言い訳を繰り返す始末です。だから選手も不信感を持ち、ファンも国民もストを支持するのです。つまり責任ある経営の姿勢がまったく感じられないのです。

どうしてそうなってしまったのでしょうか。現在のオーナー会社にとって都合のいい会社というタニマチ型のガバナンスの仕組みからは、球団やプロ野球そのものの経営が育ってこなかったということだと思います。
親会社からの天下り人事で親会社の意向で動き成果は監督任せというのでは、球団やプロ野球の経営を真剣に考えるという動機もビジョンも知恵も行動もうまれてきません。プロ野球機構にいたっては、経営の原理、原則、機能もなく、オーナー間の話し合いの場と球団間の実務の調整機能しかありません。こういった仕組みの貧困さがプロ野球を駄目にしてきました。
それに目覚め、自主的に経営再建を進めることができるのかですが、ファンや外部からの圧力でしか動かないと思います。プロ野球全体を経営し、各球団を統括して問題を解決する機能がありません。だから各球団のエゴを押さえることができないのです。そうして各球団の思惑による駆け引き、綱引きしかできなくなってしまっています。
オリックスにいたっては、獲得した千載一遇の利権を手放そうとせず強行な姿勢を貫いています。おそらく、ダイエーが球団を手放さざるをえなくなった時点で、もう一つの合併が起こり、1リーグ化に迫られることを虎視眈々と狙っているとしか思えません。だから新規参入はなんとしてでも阻止したい。時間のばしをしたい。1リーグ化はオリックスにとっては最高のシナリオですからね。そういう意味ではオリックスがもっとも戦略的かもしれません。
読売新聞は、改革の矛先がやがて放映権料問題にくることを恐れています。逆指名とかFA制度といった巨人が有利になるためしくみ(それは素人考えでしたが)も見直される流れです。だから早く事態を収拾し、改革に歯止めをかけたいと考えるが自然です。だから社説まで使って、経営側を正当化してファンや国民の怒りや不信感を沈めるのに必死です。
経営側にプロ野球発展、ファンの拡大にむかう情熱も意欲もないのです。たとえあっても具体的な行動に移す機能がありません。経営サイドは、もっと真摯に経営を考えないといけません。「ファン(顧客)を維持し、ファン(顧客)をさらに広げていくこと」を忘れた経営は経営と言えないのです。
プロ野球は誰のためにあるのかという根本的な理念を確立し、プロ野球そのものと各球団の経営を立て直すガバナンスの仕組みを考えない限り、プロ野球再生への道は険しいといわざるをえません。
根来コミッショナーが提案する官僚的発想の「有識者」というあいまいなメンバーでは経営がみえてきません。まずはライブドアや楽天といった新しいメンバーに新規参入をしてもらうことです。プロ野球の将来に情熱もった新しいコミッショナーを据えて、やる気のある若い新しいメンバーの新しい視点や発想を取り入れながら、できることから改革していくという現実的な方法をとるべきだと思います。

企業買収をいくつも手がけてこられた方がおっしゃっていた言葉を思い出します。
「企業買収とは、経営の情熱を失った会社から、経営の情熱を持った経営者に会社を移転することです。そうでないと買収された会社はうまくいきません。ほとんどが失敗しています」
これは買収だけの問題ではありません。改革にもまず「情熱」が必要なのです。

時間がかかるから待てというのはあまりにお役所的です。時間を言い訳にするのは郵政公社と一緒でやる気がないという証拠です。

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