それにしても、日産のゴーンさんは思い切った戦略にでたものです。昨日、横浜で行われた新車発表会で、2004年に国内市場に投入する6車種を一挙に公開しました。横浜は2010年に日産が本社を移転することになっており、中田横浜市長も熱いエールを送っていました。

「 SHIFT_ それはいままでの常識を変えること。そこに、新しい可能性が生まれる」

「 SHIFT_ 」(変革)をキーワードに、ゴーンさんのコミットメント(公約)である「日産180計画」の大詰めのステージに向けた挑戦がいよいよスタートします。これは、日産の企業イメージ戦略とそれぞれの車種のブランド戦略を連動させ「1×6=10」の効果を狙う高度なブランド戦略です。
ゴーンさんは、マスコミを活用するのが上手な人です。日産社内の意識改革にしても、マスコミに積極的に登場して熱いメッセージを投げかけてきました。マスコミに出たメッセージを見ると、社員の人たちも、ゴーンさんが本気だという確信を深めます。投げて手元に帰す「ブーメラン効果」を見事に見せてくれました。
今回は、「 SHIFT_ 」をキーワードとして 「日産」のブランドのテーマをつくり、それぞれの車種のメッセージを連動させていくというブランド・アイデンティティ戦略です。昨日は「新車」の発表というだけでなく、その「戦略」のデビューでもあったわけです。だから新車の発売直前まで秘密にするという自動車業界の常識破りの一挙公開でした。今日の産経新聞の1面を全面広告に使うという型破りなアイデアにも、そのことを窺うことができます。

こういった戦略には当然リスクも伴います。うまくいくと「日産」のイメージ戦略と個々の車種のイメージ戦略の相乗効果が生まれますが、下手をするとそれぞれの車種の「個性」づくりが犠牲になりかねません。まあ、その程度は十分考慮されていることと思います。
「 SHIFT_ 常識」、「 SHIFT_冒険 」、「 SHIFT_青春 」、「 SHIFT_記憶 」、「 SHIFT_関係 」、「 SHIFT_コミュニケーション」、「 SHIFT_デザイン」、「 SHIFT_限界 」などをテーマとした企業広告も始まるようです。日産の「シフトサイト」やニュースリリースで見ると各車種のコンセプトも、しっかり「 SHIFT_ 」で統一されています。後は、それぞれの車種に「魅力」がどの程度あるのかです。ひとつひとつの車種に魅力がなければ砂上の楼閣を描いたことになってしまいますからね。また矢継ぎ早の発売に営業がしっかりついていけるかということに焦点が絞られてきます。
第一弾で発売された新型クロスオーバーSUV「ムラーノ」は北米でヒットした実績がありますが、その他の5車種はどうでしょうね。きっと多くの人たちが確かめ見極めようと展示場に出かけるに違いありません。
常識を破るという戦略が、マーケティング、ブランド戦略の教科書ともいえるほどオーソドックスな考え方で組み立てられていることも面白いですね。やはり戦略の屋台骨はシンプルでベーシックです。「常識を破る」ということは「基本に立ち返る」ことを示してくれているようにも思えます。戦略に魔法なんてないのです。

ゴーンさんのメッセージのなかに現代の本質を語る言葉がありました。
SHIFT_ thinking 「考え方を変える」こと。これは、今まで誰もが、当たり前だと考えていたものの見方や方法、日常の生活の仕方を変えてみることです。これまでの延長線で改良を加えるのではなく、明確な目的を定めて、従来の考え方にとらわれず、より効果的にものごとを行うということです。これは変革です。そして、変革こそが、より良く、より速く、より高いレベルの成果を実現するのです。


ゴーンさんのコミットメント(公約)では、全世界でトータル100万台を上乗せするということだけが達成されていません。今回のオペレーションは、このコミットメントを実現するためのチャレンジでしょう。
残された期間が短いこと、また積み残した販売台数が大きいことで厳しい見方もあります。しかし、実際に100万台が上乗せできなくとも、ダイナミックな飛躍や活力が導き出せれば今回のオペレーションは成功したと評価されるに違いありません。
大切なのは、高い目標を掲げ、現実とのギャップを埋めるために、新しい知恵がどれだけ生み出せるのかということですから。まずは、具体的なマーケティングの展開と、日本市場での目標が実際に達成できるかどうかに注目したいところです。

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