またまたトランプ大統領らしいサプライズが飛び出しています。トランプ大統領が、TPPからの離脱を選挙公約に掲げ、大統領就任直後に脱退を表明したTPPへの復帰検討を指示したというニュースに思わずのけぞってしまった人は少なくないのではないでしょうか。

それがトランプ流なのかもしれません。トランプ大統領は、損得勘定以外に、これといった理念や戦略、行動原理がないからなんでもありなのです。外交は、その場で、自らにもっとも有利な条件をぶつけあう取引だという色彩がどんどん濃くなってきています。

だから、相手が北朝鮮であっても、実をとれそうなら、金正恩との米朝会談開催も躊躇がありません。ある意味で選択肢の自由度が高いともいえるかもしれません。

同盟国に対してですら、安倍総理の笑みは長年アメリカを出し抜いてきた笑みだと皮肉を言ってみたり、鉄鋼・アルミ関税適応国から除外しないのです。行動に原理があるとすれば、ふたつの基準です。アメリカにとって有利か、自国での支持アップにつながるのかです。

理念ではなく、ビジネス・ファーストで動くトランプ大統領の一挙手一投足に世界が驚かされ、また予想もできなかった局面が生まれてきます。

さて、TPP復帰を口にしたということは、トランプ大統領の対中国外交での読み違いがあったことを示しているように思えます。強硬な条件をだせば、譲歩する相手だと思っていたのではないでしょうか。

冷静に考えれば、いくら先のことはわからないにしても、現在の中国の経済の伸び率、研究開発投資の規模、人口の多さなどを考えれば、米国との力の差はさらにと縮まってくると考えるのが自然で、しかもグローバル化し、関係が複雑化した経済の時代に貿易戦争を仕掛けて中国がひれ伏すとは到底思えません。

つまりトランプ大統領は、貿易戦争の脅しではたじろがない相手との取引を有利にするつぎの手を考えたときにTPPしかないと感じたのでしょう。TPPの本質に戻ったということでしょうか。

こうやって見てみるとアメリカが離脱したにもかかわらず、安倍政権が11か国によるTPP協定を進めたことは評価したいと思います。トランプ大統領は、力関係で取引の優劣が決まる二国間協定に持ち込みたいところでしょうが、日本にとってはTPPは、それに対する歯止めにもなってきます。

今日国際的な経済関係は、もはや一対一の貿易ですべてが決まる時代ではなく、どう協働するかのルールを互いに持つことが鍵となってきている時代です。トランプ大統領の意図がなにであれ、米国のTPP復帰が実現すれば、中国の行動にも影響してくることは言うまでもないことです。

それにしても、麻生さんがぼやいたように、経済の尺度では、モリカケ問題などとは比較にならないぐらい重要なTPPですが、ただ、日本が多国間の経済協定を結び、運用するためには、行政の透明性は不可欠です。今回、モリカケ問題をきっかけに、いかに官僚が恣意的に情報を扱っているかが明らかになりましたが、日本が超えなければならない重要な課題だと感じます。