森友問題での不透明な土地取引や決裁文書の改ざん、まるで戦前を思わせる政治による教育現場への圧力、これまでなかったとされていた自衛隊の日報についても、稲田防衛相時代に存在が確認されていたにもかかわらず、報告されていなかったとにわかには信じがたい話が発表されるなど、権力の信頼を揺るがす出来事があいついでいます。こういった問題が安倍内閣になって多発してきたことは、安倍政権そのものは現実路線を歩んできたとはいえ、安倍政権の内部あるいは周辺で進んできた右傾化が生んだ必然的な歪み、また緩みかもしれません。

そして、ついに二階幹事長からも、どこかたるんでいるのではないかと苦言がでたように、与党からも安倍政権への不満や批判が公然と語られるようになってきました。

いずれにしても、官邸が認識していたかどうかはわかりませんが嘘が多すぎます。森友問題での佐川元局長が答弁で平気で嘘をついたり、自衛隊の日報のタイトルがイラク関連の文書とわかりにくかったことで存在確認が遅れたとしているようですが、デジタル文書なら本文も含めた検索ができるはずだし、いつの時代の話なのかと疑ってしまいます。いくら装備に金をかけても、今日の軍備は情報ネットワーク化してきており、情報管理や情報共有、またITの基礎すらこなせないようでは話になりません。

さらに大阪航空局や気象台の機密文書が道路に散乱とは、目を疑うような事故までが起こってきたわけですが、2009年に福田内閣が、日本で初めての公文書管理の基本法「公文書管理法」を制定したところからは大きく後退しています。法案の見直しやデジタル時代に適応した現場での文書管理のあり方を改善することは待ったなしです。

さて、安倍内閣の信頼性が著しく低下してしまったために、大きなオペレーションは期待できなくなり、政治が重苦しく、また停滞してきそうです。このままでは、国内政治だけでなく、これまで安倍内閣の強みだった外交も、国内の安定基盤を背景にした存在感を示すことは難しくなってきそうです。

それでなくとも、トランプ時代になり、日米関係もこれまでのように追随していれば安心というわけにはいかなくなってきています。トランプ大統領が「私の友人の安倍総理と話をすると総理は“ほほ笑んでいる”」「(安倍総理の笑みは)『こんなに長い間、米国を(貿易で)出し抜けたなんて信じられない』という笑みだ」と、礼をかくようなツイートを投稿し、また鉄鋼やアルミに関税適用除外から日本を外しました。トランプ大統領が示したように米国に追随していれば日本は安心という時代の終わりを象徴するような出来事だと感じます。

そして金正恩の訪中で北朝鮮問題の行方も不透明になったばかりか、日本はこのままでは日本は切り札となるカードもなく、さらに北朝鮮問題で日本がかかわることすら難しい状況になってきています。

政治が停滞することが許される状態とはいえませんが、だからといってこの状態で野党の弱さを批判してもしかたがありません。むしろ問われているのは与党自民党の活力です。そうでなければ政権担当能力も疑われてきます。

かつての55年体制では、野党の社会党は「万年野党」に過ぎず、実際は与党の派閥間での権力交代が政治のエネルギーの源泉でした。健全な「政権党」でありたいのなら、今こそ自民党内での、政権の交代をめざすダイナミックな流れをつくることが責務になってきます。

9月の総裁選が山場になってきますが、ぜひ、重苦しくなってきた政治を明るくするリーダーの登場と選出に期待したいところです。個人的には、日本の老齢化したイメージを刷新するためにも、世界のなかでは決して若すぎない小泉進次郎総理の誕生がベストかと感じていますが、さてどうでしょうか。