選挙で自民党が圧勝したために、森友・加計学園問題も幕引きされるのかと思いきや、会計監査院の報告で再燃が避けられない気配です。森友・加計学園問題は、与野党攻防の政争となってしまっていましたが、日本の民主主義がまるで途上国のような状態で止まってしまっていることをわかりやすく見せてくれた出来事で、森友・加計学園問題で起こった真実がなにで、同じ轍を踏まないために何が課題なのかを明らかにすることが問われています
安倍さんや昭恵夫人がどうのこうのという事件の発端についてはさておき、誰もが驚いたのは、官僚が平気で嘘をつき、また資料を消去したというのです。デジタル時代では、保存コストはほとんどかからないので、資料の破棄は不自然で、意図的に証拠隠滅したと見るのが自然です。これでは日本が民主主義国とはいえません。しかもあれだけ国民を愚弄する発言に終止した佐川理財局長が国税庁長官に栄転する人事は、モラルの崩壊そのものでした。

森友・加計学園問題は、本州と四国の間に、歴代3人の首相が故郷に錦を飾るかのように、鳴門、坂出、今治に3つの橋を架けた壮大な無駄に比べれば小さな事件でしょうが、日本は同じ病を抱えたままではないかと感じてしまいます。

今回、会計検査院が森友学園への国有地売却について「値引きの根拠不十分」としたことで、地味な存在であった会計検査院が一躍脚光を浴びましたが、実は、会計検査院の強化が、日本の民主主義を深化させ、また政治家と官僚による馬鹿げた無駄をなくしていく大きな鍵をにぎっているのでなないかと思っています。

会計検査院のあり方については米国の会計検査院(GAO)がかなり参考になりそうです。重要な違いは日本は、会計検査院は「独立した行政機関」で、検査するかどうかの判断は会計検査院に任せられているのですが、米国では立法府の議会に所属している点です。つまり、野党も、あるいは国会議員も会計検査を求めることができます。それに人員も日本の倍以上の体制です。また捜査に関する強制権を持たせることは絶対条件でしょう。

会計検査院(GAO)が沖縄の辺野古は滑走路が短すぎて、使い物にならないと報告していたり、米国の戦闘機開発コストが高すぎるとクレイムをつけていることで注目されたこともありましたが、今のマスコミは、時代劇のように視聴者や読者の興味をひく、どうでもいい政局話とか不倫騒動とかをしつこく報じるのですが、会計検査院のあり方について、それがどれだけ民主主義にとって重要かとか、海外と比較してどうあるべきかを論じたりはしません。

今回はせっかく会計検査院が大きな成果をあげてくれたので、ぜひとも、国会で会計検査院の強化について議論してもらいたいものです。日本のリニア計画なども、政治家は反対すれば票を失いかねないので、ほとんど吟味されずに、みんなで渡れば怖くないという感じで突っ走っていますが、冷静にその経済効果、費用対効果などを吟味してみるべきで、それも本来は会計検査院の仕事かもしれません。

加計学園問題も、国家戦略特区を活用するのはいいとしても、ほんとうに投資に見合う結果が得られるのかはかなり疑問符がつきます。市と県で、学園に最大96億円を支出する補助金について、差し止めを求める住民訴訟が起こっていますが、今治市は第三者委員を設置し、検証するようです。しかし、この件についても、本来は会計検査院が検証すればいいのではないかとも感じます。

そういう切り口、政策提言こそ、「維新」や「希望」の出番だと思いますが、どうも役者がいないのか、存在感を示せず、昨今はマスコミにも呼んでもらえないお寒い状態になってきているようです。