電気自動車は勢い良く販売台数が伸びてきています。世界での販売台数が昨年上期の30万6639台から2017年上期は47%増の45万2329台となっています。その牽引車となっているのが中国です。それ見たことか、電気自動車に乗り遅れた日本はまたスマートフォンの二の舞いを踏むという声も聞こえてきそうですが、いやことはそう単純ではありません。

中国で電気自動車が伸びてきたのは、政府からの補助金に加え、ガソリン車にかけている規制を外す優遇策が取られているからです。その補助金も、2020年には打ち切られるといいます。いつまでも補助金では、売れれば売れるほど財政が圧迫されるからでしょう。
電気自動車の普及促進は、補助金政策からメーカーへ新エネルギー車の販売ノルマを課す政策への転換を打ち出しています。2019年は各社年間販売台数の10%に、2020年は12%に引き上げようというのです。

本気でしょうか。2016年中国での自動車販売台数はおよそ2,800万台でしたが、電気自動車が売れたのは40万台で、およそ1.4%。このまま倍々ゲームで伸びていくという計算でしょうか。かなり楽観的な見通しに基づいた販売義務で、自動車市場を縮小させないと実現できそうにありません。

さらにウォール・ストリート・ジャーナルに気になる記事がでています。中国で電気自走車は既に供給過剰の状態にあり、今年1〜9月の生産台数は42万4000台にもかかわらず、一方、販売台数は39万8000台にとどまったというのです。しかも、このうち消費者に販売した割合は4分の1程度にすぎず、残りは国営のタクシー会社や公共サービスが購入した可能性も否定できないようです。さらに、中国国産電気自動車の先駆者である比亜迪(BYD)と北京汽車工業(BAICモーター)の1〜9月の販売台数が、電気自動車に注力しすぎたことが災いして、それぞれ19%減、26%減となってしまったとしています。

電気自動車はまだまだ消費者のニーズを満たすレベルに達していないのです。テスラの成功はモデルS、モデルXで、高価格で電池を満載し、実用的な航行距離を確保したことと、電気自動車を「新世代エコカー」から「加速性能が抜群の自動運転機能までついた新世代カー」に転換したからでした。

そのテスラも、不安材料がないわけではありません。2017年7〜9月期決算で売上高は前年同期比29.9%増とはいえ、四半期決算過去最大の赤字(約700億円)となりました。テスラが、ほんとうの意味での自動車メーカーになるはずだった、35,000ドルのモデル3も生産が遅れに遅れてしまっています。

どこまでも夢を追い求めるテスラのイーロン・マスクCEOは、電気スポーツカー「ロードスター」と電気トラックの試作車を発表するなど強気で、さらに中国の上海に自社工場を建設し、中国市場の成長を取り込もうとしていますが、果たして思惑通り、中国市場が勢い良く伸びつづけるのかの不安材料もでてきました。

まだまだ国策の後押しと補助金頼みの電気自動車ですが、ただ販売義務化は、各社とも赤字覚悟の身を切るような販売にでてくるでしょうから、それがどんな変化を生みだすのかが焦点になってきました。
あとは、電気自動車の弱点を克服する次世代電池と目されている「全固体電池」が、いつ、誰によって実用化されるのかにかかわっているのだと思います。


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