トランプ大統領の訪中は、「総額2500億ドル(約28兆円)相当の大型商談」のサプライズで終わりました。習近平主席はずいぶん大盤振る舞いの貢物を提供し、トランプ大統領はその成果を手土産に帰国するという展開です。札束外交とでも言うのでしょうか。

しかし、その札束で、トランプ大統領が貿易の不均衡で中国を責めないと公言し、知的財産権侵害や不公正な貿易慣行など米中間に横たわる通商問題をパスし、北朝鮮問題でも、もし裏で米国による北朝鮮攻撃ないし、政権転覆工作の実行などへの中国の容認合意があれば別ですが、トランプ大統領の圧力強化要請に対して、習近平主席が「朝鮮半島問題については対話を通じて解決策を探ることに専念する」と、対北朝鮮政策になんら進展なく平行線のまま終わってしまいました。

しかも、その札束は見せかけのもの、フェイクの可能性があるとウォールストリート・ジャーナルが疑問を投げかけています。

たとえば、半導体大手クアルコムから中国のスマホメーカー3社に3年間で120億ドル相当の半導体を購入するという合意も、これまでの取引額と変わらないと関係者の見解だそうです。また、ボーイングは航空機300機を受注しましたが、ボーイングの1000機の受注残の多くは中国の買い手で、新規の契約ではない可能性があるとしています。
 
もし偽物の札束で、通商問題をパスし、北朝鮮問題の制裁要請もパスされてしまったとしたら、トランプ大統領は、とんだピエロだということになります。しかし、計算高く、それほどお人好しでないトランプ大統領と、やがては経済力でアメリカを抜く国の独裁者をめざす米中両国のトップの間には、素人の想像をはるかに超えた密約があったのかもしれません。