今回の選挙で国民が得た成果は、民進党分裂で国民の選択肢が増える可能性がでてきたことと、ようやくこれまで憲法を議論することをタブー視し避けてきた時代から日本はようやく抜け出す機会を得たことではないでしょうか。しかし、改憲については逆に難しくなったかもしれません。なぜなら、こちらも具体案になるとさまざまな選択肢が生まれてくる可能性が高いからです。
これまでは一方は古色蒼然とした「自主憲法制定」、他方ではまるで憲法が国民よりも上位にある経典であるかのような「護憲」という旗を掲げていただけで、中味についての議論は国民にとってはいっさいなかったに等しいのですが、いよいよどう変えるのかの具体的な話に入ってくると、まだまだ国民の総意が得られるほど中味がつまってきているわけではありません。

どう改憲するのかになると、さまざまな議論が噴出してくることは避けられません。なぜなら、どのように改憲するのかは、それぞれの党の生命線となる考え方となってくるからです。

安倍内閣が本気なら9条に自衛隊を明記するという無難な案になってくるのでしょうが、それで、ほんとうに改憲の意味があるのかが問われてきますし、党内がまとまるとは思えません。

立憲民主党はおそらく明確な考え方を示してくるものと思います。与党の公明党はどうでるのかによっては、支持層を失いかねません。

もっとも問われてくるのは、希望の党と日本維新の会です。もし、安倍内閣が改憲の実績をつくるために、たんに9条に自衛隊を明記する案を示した場合に、もし安易にそれに乗ったとすると党としての存在理由を失います。

とうぜん8章の地方自治に関しての修正なり、日本の進むべき方向性、また国会改革、国会解散権の規制などの改革を示す改憲案を強く主張しなければ「第二自民党」というか「自民党下請け組織」に堕してしまい、それは致命傷になってきます。

そういったプロセスを経て、ようやく本当は何を変えるべきなのかの課題が浮き上がってきて、国民がやっと選択できるようになるのです。

防衛問題についても、北朝鮮の金正恩の狂気や中国の膨張主義の脅威もさることながら、日本が長くタブーにして議論を避けてきたために、防衛問題をブラックボックス化してしまってきたことのほうがはるかに危険かもしれないのです。

日本は国のあり方でさまざまな岐路にたたされています。その選択を国民がするためにも、国民が、国のあり方の根本を示す憲法についての知識や理解、また自らの考え方を持ちたいところでしょうが、ようやくそのスタートに立てたということではないでしょうか。

そんな議論を深めるためには、まずは、国会で憲法議論を継続してもらいたいものです。そのためには国会を年間開催にする価値がありそうです。