政党地図に大きな変化が始まっています。それは国民の考え方に、できるだけ選択肢を合わせる政治体制を築くチャレンジです。日本は長い間、政治は亡霊のような対立がつづき、国民の選択が狭められてきました。典型的には、憲法改正についても、改正の中味はほとんど議論されないまま、改憲か、護憲かで塩漬けになり、安全保障も本来は、防衛力、経済力、外交力の総合力ですが、防衛力強化か、平和外交かといったオンかオフかの議論から一歩も進展しません。政治は国民生活とは遠い舞台で回ってきたのです。
そしてようやく、希望の党と日本維新の会という異なる選択肢が出来ました。しかし、この勢力は今回の選挙では失速しそうだといわれています。おそらくそういう結果になる空気が漂っています。いやむしろ今回の選挙ではたして勝っていいのかとも感じてしまいます。

希望や維新の前に立ちはだかっているのは、マーケティングでいう「ポジショニング」の問題、つまり与党でもなく、従来の野党でもないという立ち位置のとりかたの難しさ、またポジショニングの違いをどう認識してもらうのかの難しさです。

長い間、保守・革新という違いしかなかったところに、新たな違いを示し、それを浸透させていく難しさです。マスコミのコメンテーターなども混乱しています。

希望も、維新もその肝心なところで成功していません。

維新は、国会の森友・加計問題で、まるで安倍内閣、また官僚の側に立ち「新しい野党」のイメージを失いました。希望も小池さんの一枚看板にすぎず、しかも小池さんの歯切れが悪く、国民の共感を呼ぶようなメッセージが発信ができないままです。日経新聞の分析では、ツイッターで話題からも消えてしまったようです。

とくに、今回の選挙は、これまでの政権交代と違って政権が倒れるほどの風が吹いていません。宮沢内閣内閣のバブル処理失敗が引き金となり細川内閣が生まれ、また麻生内閣発足時にサブプライムローン問題に端を発した世界金融危機が日本を襲って、民主党政権が誕生しましたが、安倍内閣の経済政策は成功していないだけで、とくに大きな失敗は今のところ現れていません。むしろ実感がないとはいえ、好景気が続いている状態です。とはいえ、他の先進国と比べ、安倍さんが偉そうに言うほど経済成長もしていません。

森友・加計問題で安倍総理への信頼は大きく揺らぎましたが、それが安倍内閣崩壊の決定打になるかといえば疑問でした。

希望の党も、日本維新の会も、自ら風を巻き起こさなければならないのですが、どうも希望の小池党首は風に乗るのは得意でも、風を引き起こすパワーはないことが致命的です。日本維新の会の松井知事もよくやってるとは感じますが、残念ながら、森友・加計問題でのイメージダウンをカバーできていません。

国民の意思に近づけるために新たな選択肢をつくりだすためには、国民が新鮮さを感じる視点を生み出し、発信していかなければなりませんが、今は希望も維新もまだその力が十分ではなく、これから培っていくものだと思います。そのためには、変にブームに乗って焼け太りしないほうがいいのではないでしょうか。まだ選挙は終わっていませんが、選挙後にどんな仕切り直しができるのかどうかです。

まずは政党として、政策だけでなく、国民とのつながり方にいたるまで、なにが違うのかの基本を固めることを、ぜひやっていただきたいのです。それにしても立憲民主党はうまく、自らの違いを示せ、もしかすると野党第一党になるかもしれない勢いです。
それはそれで素晴らしいことだと思います。

日本で三極体制に国民やマスコミが慣れ、浸透していくには、きっと後5年とか、10年かかるのではないでしょうか。北朝鮮情勢に大きな変化があったり、グローバル化した経済を揺るがすリスクの潜在的な発信地がいくつかあり、その地殻変動が起こればまた別でしょうが、しばらくは「タメ」の時期でしょうし、手垢がついてしまった小池さんに変わる新たなリーダーが登場してくるのかどうかにもかかっているのだと思います。

与党もいくら選挙で大勝しても、それは急襲解散作戦の成功と野党のオウンゴールによるもので、国民の気持ちはかなり離れてしまっているので、しっかりとした政権運営ができなければ、いつ失速しないとも限りません。気を緩めることができないでしょうが、それはそれで国民にとっては望ましいことです。

本当の競争は選挙後に始まってくるはずで、そんななかで、新たなコンセプトや新たなリーダーが生まれてくることを期待したいと思います。