日本の労働組合が、ベア交渉をしたり、議員さんを国会に送り出すために選挙を手伝う以外に、どんな役割を果たしていのかはよくわからないのですが、そもそもは、組合員の方々、また属している会社とは運命共同体にあるはずです。今回の日産の資格を持たない社員が検査していた問題にせよ、神鋼のアルミと銅製品の性能データの改ざんについても、現場が関わっていると思われるので組合員の方々はわかっていた問題だと思います。

現場から、トップへのコミュニケーション回路のいずれかが機能していなかったか、トップが容認していたということですが、発覚すればあまりにも大きな損失が発生するので、トップが容認していたとは考えにくいところです。日本の企業の多くが、経営トップというよりは、現場のトップ、またミドルマネジメントが実質的な権限を持っています。とくに大企業は、そんな現場が支えるお神輿経営のスタイルが多いのではないでしょうか。

それが裏目にでた典型だと思います。現場のトップやミドルが大きな権限を持つと、自分たちを責任を背負っている、目の前の事業、そして業績だけしか見えなくなるということも起こってきます。不正があっても、波風を立てないように、見逃そうということもおこってきます。とくに成長性を失ってくると、守りの意識が強まり、問題が発覚さえしなければ波風を立てないでおこうとなります。

しかし考えれば、不正問題が発覚した際のリスクは大きく、株価下落で株主が不利益を被るだけでなく、業績にも影響してくるので、社員の人の所得にも影響します。つまり、労働組合から見れば、現場の組合員さんも影響を受けるのです。

しかも、ミドルマネジメントで問題がにぎりつぶされているとすれば、組合と経営トップのコミュニケーションパイプをつかって現場の声を届ける役割を担ってもおかしくないはずです。問題を初期に見つけ、対処すれば、リスクの小さいうちに問題解決がはかれ、会社、組合員双方によしです。

日産や、神鋼の労働組合がどんな役割を担っているのか、またどれくらい力があるのかは全く知りませんが、ベアは、いまや安倍内閣からも要請がでるような時代で、ほんとうに組合の力が必要なのかはよくわからない時代になってきています。組合運動よりも、雇用の需給関係、雇用市場状況のほうが組合運動よりも影響しているのかもしれません。

いずれにしても、「組合員ファースト」の組合であるなら、いったいなにが組合員の方々の職業人生にとって大切で、組合として組合員の方々になにが貢献できるのかという視点で組合活動を見直していれば、将来に影響する今回のような不正を見逃すというkおとが絶対しなかったはずです。

組合がどうあれば、働く人のほんとうの利益につながるのかを再考するためにも、産業別、企業別の組合でいいのかも疑問です。いつまで工業化社会の時代の組合の延長線にいれば、とうぜん組織率も下がってきます。
もし、組合が組合員ひとりひとりの利益の代理人として存在するなら、今回のような不正の早期発見、また会社へのアドバイスも行うべきでしょうし、また成長性が低く所得の伸びが期待できない企業から、より成長性が高く、より高所得が望める企業への移籍を斡旋できる機能などをも追求すべきでしょう、

とうぜん労働組合にかんする法改正も必要だと思いますが、日本の左翼って、そんなビジョンも役割も持っていないところが悲しいところです。

日本は労働組合に限らず制度疲労してしまったシステムもなかなか改革できないままです。「保守」だ「革新」だという意味のない旗印で政党ファーストの政治が続いてきた当然の結果ではないでしょうか。