安倍内閣による、安倍内閣のための国会解散に、与野党の国会議員の先生たちはすっかり選挙モードに走っておられるとか。しかし、なにが争点なのかが未だにわからない国会解散は、安室奈美恵さんの引退表明、過激なトランプ大統領の国連演説の衝撃ですっかり影が薄くなってしまいました。それにして多くの人たちが安室さんの引退表明にショックを受け、涙を流したことで、安室さんが、国民的歌手だということをあらためて感じさせられます。
さて、国連でのトランプ大統領演説で、北朝鮮による拉致問題まで言及させたのは安倍外交の成果だと思いますが、トランプ大統領は、米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると過激な警告を発しました。
国家として扱わず、金正恩をエルトンジョンの歌のようにロケットマンと呼び、宇宙でひとりぼっちで燃料を使い果たし、空の上でヒューズが切れ、冷たい地獄のような火星に行き着くしかないよと脅したのです。



ロケットマンは、さっそく「史上最高の超強硬対応措置を断行することについて慎重に考慮する」と声明を返し、なにかの偶発的な出来事によって軍事衝突が起こるリスクが高まってきました。

北朝鮮の核ミサイル問題は、安倍内閣にとってはまるで神風のような追い風です。しかし、選挙の争点にはなりません。野党で北朝鮮との強いコミュニケーションパイプを持つところがあれば、別の選択を示せるかもしれませんが、北朝鮮の核ミサイル開発に関しては、軍事と、経済制裁の両面からの「圧力」しかないのが正直なところでしょう。その「圧力」で、北朝鮮を交渉のテーブルに着かせ、核ミサイル開発を断念させることができるかどうかも定かではありません。

ではなにを争点にすることができるのでしょうか。

森友・加計学園問題は、あきらかに安倍内閣や官僚の失態ですが、国会解散に値する、あるいは選挙の争点になるとは思えません。

安倍総理は、消費税増税分を、幼児教育や高等教育の無償化に充てるなど、若い世代のサポートにも振り分けるということですが、それは民進党の主張とも重なります。

この「ひとづくり革命」にむけた消費税の活用方針は、民進党の前原さんがおっしゃるように、民進党の主張のいいとこどりだとしても、強者が弱者の特徴を模倣し、弱者のもつ強みを打ち消してしまう戦い方は、ビジネスの世界、マーケティングの世界ではよくあることです。

前原さんが、代表になったために、自民党となにで違いを打ち出すのかが問われています。前原さんも自民党的な総花体質で、切っ先が鋭く、大衆受けする主張ができるタイプではないところが民進党にとっては厳しいのではないでしょうか。

自民党も、民進党も消費税増税を前提にしており、それとは違うポジションが残されています。

国会議員が傷みを伴う改革をしないままに、消費税を上げるのは、国民目線ではないという主張です。

自民党も今回ばかりは消費税を上げないとはいえる立場ではなく、民進党も枝野さんは消費税増税に反対でしたが、前原さんはそもそも増税派で「引き上げは法律で決まっている」としているので、争点にならなくなってしまいました。ライバルたちが選択できない切り口を持つことが競争戦略の王道です。

「小池新党」にはチャンスで、議員定数、政党助成金や文書通信交通滞在費問題をまずは解決することが国民の利益で、消費税増税はその後だという、いわば当たり前の立ち位置を取れるのはしがらみのない新しい政党か、共産党ぐらいではないでしょうか。

異次元の金融緩和によるアベノミクスで、インフレも起こらなかったこと、低成長から抜け出せなかった言い訳として、内閣御用達のブレーンの高橋洋一さんは、消費税を上げたことが元凶だったとおっしゃています。

もしそうなら、景気は悪化していなくとも、低成長から抜け出せない状態であることに変わりがなく、消費税をあげることは、今の景気にすら冷水を浴びせかけることになりかねないと言えばいいのです。

森友・加計学園問題も、安倍内閣と対立するというよりは、官僚の情報公開を進めないといけない、政治を透明にしようという主張もできるでしょう。

いくら前原さんが”all for all”と言い、また安倍さんが”人づくり革命”だと美辞麗句を並べ、それらが増税の根拠だと主張しても、政府に信頼がないことが致命的です。政府に信頼がないから、金融資産は増えても、老後を心配して消費は増えません。そこが北欧の国々と決定的に違うところです。

信頼どころか、政官財癒着大国日本は沈みっぱなしです。

ついに知的財産を生みだす基盤になる、また日本の強みであるはずの大学の世界ランキングでも惨めな状態になってきています。さらに自然科学系学術ジャーナルから出版される研究論文の統計をとっているネーチャー・インデックスからも、日本の科学成果発表の水準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取ってきていることへの警鐘が鳴らされている状態です。



それにしても民進党はなにを選挙の争点にするのでしょうか。わかりやすく、人びとが共感できる切り口を生み出せなければ、ほんとうに泥船になってしまいかねません。